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なんだかジャ○プっぽい展開

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第二十章 戦い ――星――
 
 
 
フェイトが、スカリエッティを倒しに行ってから数分後、私達にまたあの強大な魔力が近づいてきた。
無数の蝙蝠がどこからともなく現れ、人の形になっていく。
 
「……あれは…いないようね」
 
第一声はそれだった。本当にそれが目的で来たようだ。
 
「プレシア・テスタロッサ…!!」
 
はやてが呟く。プレシアはなのはとはやてを視線を移した。
 
「まあ、ここで待っていれば戻ってくるのでしょう?でも…その前にあなた達を倒さなければならないわね」
 
彼女の周りに、フェイトと同じ電気質のスフィアが幾つも出来る。それが纏まり、真っ直ぐ私達に向かってきた。
 
「エクセリオンバスター!!」
 
魔力と聖力がぶつかり合い、拮抗する。そしてそのまま爆発した。
 
「……少しは…楽しませてくれそうね…」
 
この人…やっぱり相当強い。
 
「なのはちゃん、大丈夫か!?」
 
「大丈夫。でも、気をつけて…」
 
「分かっとる」
 
相手の様子を見ていると、今度は自分たちの周りにスフィアが形成された。
避けられない。
 
《Oval Protection》
 
「ファイア」
 
攻撃が当たると同時に聖力を削られるように消費する。
 
…やばい、保たないかも…。
 
連打攻撃が終わり、やっと防御を解く。
はやてはなのはが肩で息をするのを見て焦った。
 
生憎、ここに高速機動型はいない。一旦相手から離れて、長距離戦に持ち込むしかないが相手はそんな暇は与えてくれないだろう。どちらかが囮になるしか…。
 
『なのはちゃん…』
 
『分かってる……』
 
この二人でどちらの方が白兵戦に向いているかと言えば、勿論なのはだ。しかし、こんなに消耗している今、相手がどんな手で来るかも分からずに突っ込むことは無謀とも言える。
 
『はやてちゃん…早く離れて一気に墜として』
 
『でも…!!』
 
『私は大丈夫だから…』
 
《A. C. S., standby》
 
「アクセルチャージャー機動!!」
 
《Strike Flame》
 
レイジングハートがエクシードモードA.C.Sに変型した。
 
「A.C.Sドライバー!!」
 
《Charge》
 
それを見て、はやては急いで距離を取る。
 
『無茶したらあかんよ…!!』
 
『うん!!』
 
なのははそのままプレシアに突っ込んだ。
 
「…私に正面からぶつかって来るなんて、良い度胸ね」
 
そう笑いながら、シールドを展開した。
なのはは突っ込みながらも、レイジングハートを振り上げて、斬りかかるようにシールドを破る。だが、そのシールドは破られることを前提に作られたようにあっさりと割れた。
 
「なっ…!?」
 
ふと、フェイトの戦い方を思い出す。
 
「機動力重視…!?」
 
なのはは周りを見る暇もなしにバリアを展開する。
 
「ファイア…」
 
丁度死角になるようなところから、フォトンバレットが襲ってきた。
強力な魔力が煙となり、なのはの視界を奪う。だからと言って、バリアを解除して飛び出すのも危険すぎる。
煙が晴れるまで待っていると、そこにプレシアの姿は無かった。
 
まさか…!?
 
『はやてちゃん…!?』
 
『なのは…ちゃ…!!』
 
苦しそうな念話に、急いで彼女の姿を探すと遠くでデバイスを交えている二人が見えた。
 
あっちが狙い…!?
 
「長距離砲撃モード!!急いで!!」
 
《All right》
 
レイジングハートを元の形に戻し、砲撃準備に入る。
 
「間に合って!!」
 
《Divine buster. Extension》
 
カートリッジを消費して、砲撃を放つ。それと同時に、空から雷が落ちるのが見えた。なのははすぐさまその砲撃を追いかけるようにはやてのところへ急いだ。
 
爆発の中から、誰か人が落ちてくる。
 
「…!!はやてちゃん!!」
 
呼びかけるも意識はなく、そのまま墜落していく。
 
《Axel Fin》
 
両手をいっぱいに伸ばし、落ちていくはやてに向かっていく。地面から約数メートルというところでキャッチし、なのはが安堵の息を漏らすが、
 
「…サンダーレイジ」
 
真上から雷が落ちてくる。シールドを張るが、落下のスピードと合わさって、なのはは地面に直撃しそうになった。だが、何かに支えられたようにスピードが弱まった。
 
「なのは…ちゃん…。ごめ…」
 
抱えられた彼女が、下にフローターフィールドを形成していてくれたらしい。
 
「はやてちゃん……大丈夫!?」
 
木に寄りかかれるように彼女を下ろした。
 
「ごめんな……右腕に力が入らへん」
 
腕を調べるが、骨は折れていない。だが、腕に黒い痣のようなものが出来ていた。きっと魔力に当てられたのだろう。
 
「はやてちゃんはここにいて」
 
「でも…!!」
 
はやてが次を言う前に、なのはは空へ飛び上がった。
 
「…皆……自分勝手やな…」
 
はやては俯いて左手で拳を握って、地面を一度叩いて空を見上げると、二人が対峙していた。
 
 
************
 
 
「一人はもう駄目になったの?」
 
詰まらなそうにプレシアは言った。なのはは唇を噛んでプレシアを見つめた。
 
「何故…そんなに人を嫌うんですか?」
 
プレシアはそれをただ見ている。
 
「人とバンパイアだって…対等に仲良く暮らしていくことは出来るはずです!!それは…いきなり自分の娘を殺されそうになって…憎むのは分かります!人間にも改善するべきとことは沢山あります!でも…あなた達も歩み寄ってくれなきゃ、距離は全然縮まらないんです…!!」
 
話を出来るんだから、きっと通じ合えるはずなんだ。
 
でも、
 
「…言いたい事は……それだけ?」
 
こんなに一生懸命に話してるのに、
 
なんで伝わらないのだろう?
 
「あなたは…食物の気持ちを考えたりするの?」
 
彼女は無表情にそう言った。
 
「食べ物と対等なんて…反吐が出るわ。あなたはいつも話し合いで解決できると思っているようだけど、万人にそれが通用するとは思わない事ね」
 
何かが心の奥にドシンと落ちた。今までの自分を、全部否定されたようで。
呆けていると、プレシアの周りに巨大なスフィアが展開された。
 
《Master!!》
 
レイジングハートに呼びかけられて、それに気がつき、シールドを張る。
 
「同じ手が通用すると思っているの?」
 
凄い早さでプレシアが目の前に来て、デバイスを振り上げていた。
 
「くっ…!!」
 
バリアブレイクも付加されているのか簡単にシールドが破れた。
 
「ファイア」
 
《ProtectionEX》
 
ギリギリで再びバリアを張る。これじゃあいつまでも防戦一方だ。なんとか攻めないと…。
 
その時、彼女からの念話がきた。
 
『なのは…こっちは終わったから…今戻るね…』
 
『う…ん……。…大丈夫?フェイト』
 
『うん…なのはこそ…大丈夫?』
 
何でもないように答えたが、完全に念話にも疲れが出てしまっている。
 
『にゃはは、大丈夫だよ?ゆっくり戻ってきて良いから』
 
それでも今、彼女をこの人に会わせたくない。だからわざと平気なふりをした。
 
『うん……』
 
訝しげだったが、彼女は納得してくれた。念話が切れて、冷静になるために一つ息を吐く。
基本的に私のようなセンターガードは動かずに視野を広く持って正確に相手に攻撃を入れなければならない。でも、すでに近距離戦に持ち込まれている。一度離さなければならない。二人で出来なかったことを一人で出来るだろうか…。
 
「来ないのなら…こちらから行くわよ」
 
プレシアが何かを詠唱すると、デバイスが光った。だが、その光は一度消える。
そして、再び光り、魔法陣が広がった。
 
「サンダースマッシャー」
 
デバイスから砲撃が発射される。
 
「ディバインバスター!!」
 
攻撃を撃ち返すと同時に威力を弱めて押されるままに後ろに下がる。そうすれば…。
長距離とは行かないが、近距離では確実に当てられない距離まで下がれた。
 
「ここからなら…!!」
 
《Load cartridge》
 
薬莢が落ちる。
 
「スターライトォ…ブレイカァアアー!!!」
 
確実にこれは避けられないはず。
太い一本柱にも見える大威力砲撃が、プレシアの身体を直撃したのが見えた。
 
「これ…で……」
 
もう自分の聖力はほぼゼロに近い。これで終わらなかったら…。
 
「う、そ…」
 
煙が晴れたとき、なのはは自分の目を疑った。服がボロボロになりながらも、その人はまだそこに飛んでいた。
 
「少し…甘く見すぎていたようね……」
 
プレシアはそう笑った。まだ余裕がある顔だ。なのははこれ以上聖力消費を避けるために一度地上に降りるようと降下した。
しかし、身体が何かによって抑えられた。
 
「バインド…!?」
 
「……いい暇つぶしになったわ」
 
ゆっくりとプレシアが近づいてくるのを、なのはは見ていることしかできない。
 
「さっきの…」
 
デバイスが光ったとき。あの時に既にバインドを設置しておいたということか。
どこに降りるか分からないのに、バインドを設置するなんて、そうとう魔力が残っていなければ出来ない。
やはり…敵わないのか……。
 
「それじゃあ、死になさい」
 
複数の環状魔法陣の張り付いた剣のようなものがプレシアを取り巻く。
なのははカートリッジを二発ロードして、無理矢理自分に聖力を溜めた。
 
「サンダー…ブレイド」
 
《ProtectionEX》
 
お願い…保って!!
 
「…ブレイク」
 
次の瞬間、刺すような痛みが体中に突き抜けた。
 
「ああぁっっ…!!」
 
意識が落ちそうになるのを何とか持ちこたえさせる。
でも、身体はもう浮力を失っていた。
 
 
流石にこの高さ…死んじゃうかな?
 
 
なのはは落ちながら、朧気な意識でそんなことを考える。
 
 
もう一度…彼女に……
 
 
目を閉じる。涙が溢れそうだった。
 
だが、固い地面はいつまで待っても来ない。代わりに誰かに包まれているような優しい感覚があった。
 
目をゆっくり開けると、恋い焦がれていた紅い瞳が、私を優しく包んでくれていた。
 
「なのは……ごめんね、待たせちゃって」
 
彼女がゆっくり地上に降りる。
 
「フェイ、ト……」
 
「大丈夫…後は任せて…」
 
彼女は私をそっと地面に寝かせると、プレシアを見上げ、向かっていった。
 
私はその背を、もう見ていることしかできなかった。
 
 

続く

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