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第二十一章 伝え合い
 
 
 
「やっと来たのね…。随分と遅かったじゃない」
 
やっと楽しみが来たというようにプレシアは笑った。
 
「母さん……」
 
「あなたに…母さんなんて呼んで欲しくないわ」
 
心底憎々しそうにフェイトを睨み付けた。
 
「私は…あなたと戦いたくないです」
 
「そう…じゃあ、無抵抗で死んでくれるということね」
 
プレシアの手から砲撃が放たれる。
フェイトはそれを最小限の動きで躱した。さっき受けた傷が痛み出す。
でも、それに構っていられるほどの余裕はない。
 
「ほんの少し前だったら、母さんに死ねと言われたら死んでいたかもしれない。
でも!!たとえ母さんが私をいらないとしても、今は私を必要としてくれる人がいるんです!!」
 
叫ぶたびに、痛みが駆け上がってくる。
 
「だから…私は、母さんが分かってくれるまで説得するつもりです!!」
 
それでも私は叫び続けた。母さんが驚いたように一度目を瞬かせると、蔑んだように私を見た。
 
「不良品のくせに…私に逆らうなんて良い度胸ね」
 
プレシアがデバイスを振り上げる。空に暗雲がたちこめ、雷が轟く。
 
やっぱり…駄目なんだろうか?
 
任せてとは言ったが、はっきり言って魔力も気力もほぼゼロに近い。
 
どうすれば…。
 
だが、攻撃の直前に、下から白い砲撃が上がってきた。
予測していなかったのか、プレシアはそれをまともにうけた。
 
『少しは貢献せんとな…』
 
『はやて…!?』
 
遠目にはやてが空を見上げているのが見えた。
 
『…大丈夫。非殺傷設定やし、威力もそんなにあらへん』
 
『…ありがとう』
 
正直、いまのを受けきる自信はなかった。
 
「くっ…あの小娘!!」
 
しかし、プレシアは逆上して、はやてに向かって急降下し始めた。
 
やばい…!!
 
フェイトが追いかける。間に合いそうにない。
 
「はやて!!」
 
消耗しきっているのか、はやての反応が鈍い。
プレシアの誘導弾がはやてに直進した。
 
「はやてちゃん!!」
 
そこになのはが現れ、はやてを抱えて横に跳んだ。
はやてのいた場所は、地面が抉れて煙を出していた。
 
降りてきたプレシアが今度は砲撃を放とうとする。
なのはが防御するためにシールドを張る。
だが、ほとんど聖力を使い切ってしまったなのはでは防ぎきることは不可能だ。
 
《Sonic Move》
 
ソニックムーブで無理矢理二人の間に割り込み、咄嗟に背に庇う。痛みに耐えるため私は歯を食いしばった。
 
だが、いつまで経ってもそれはやって来ない。
 
恐る恐る後ろを振り返ると、そこには
 
「……アリシア?」
 
プレシアが呟く。
 
「母さん…もう、やめようよ?」
 
アリシアが悲しそうにそう言った。
 
「…アリシア、どいて?母さんは…やらなきゃいけないことがあるの」
 
「フェイトを殺すの?」
 
その口調は、まるで純粋な子供そのものだった。
 
「…そうよ。だからどいて?ね?」
 
聞いたことのないような優しい声に、フェイトは顔を歪めた。
プレシアの言葉を振り切り、アリシアはフェイトの方を向いた。
 
「…初めまして、フェイト。こんな出会いになっちゃったけど…」
 
自分とそっくりだが、笑った顔は彼女の方が似合う気がした。
 
「フェイトは…人と一緒に仲良く暮らしていきたいんだよね?」
 
「…うん」
 
幼い子供のようにそう答えた。
彼女は再びプレシアの方を向き、はっきりした声で再び話しかけた。
 
「母さん…私もフェイトと一緒で、人間と仲良く暮らしていきたい!」
 
プレシアが、驚きを隠せずに笑った。
 
「アリシアもそんな事を言って……私達は人の血を吸わなければ動けないのよ?」
 
フェイトはアリシアと並ぶように立った。
 
「それでも…!!人とは自分の意志を話し合える!!だから、絶対気持ちを通じ合わせることは出来ます!!」
 
フェイトがもう一度叫んだ。
 
 
どうか
 
伝わって
 
 
「フェイト……」
 
プレシアが振り上げていたデバイスを下ろした。
 
「それに…母さんも…私があんな風にならなかったら…きっと、こんなことしなかった。だって母さん、あんなに優しかったもん…」
 
ね?と、確かめるようにアリシアはプレシアを見上げた。
フェイトも懇願するようにプレシアを見つめる。
 
だが、
 
下ろされたデバイスはもう一度振り上げられた。雷が空から降ってくる。
 
「母さん!!」
 
フェイトはそれを避ける。だが、
 
「きゃああ!!」
 
叫び声を聞いてその声の主を探す。
 
「アリシア!?」
 
何年も眠っていて、急に身体が動くはずがない。
そんなこと、少し考えれば分かることだった。
その魔力に当てられて、彼女の身体は木の葉のように吹き飛ばされた。
木にぶつかってすぐに止まったが、意識がなくなったらしい。
 
「母さん!何で!?」
 
フェイトが振り返ると同時に、再び雷撃。それをギリギリでまた避けた。
 
「人と共には…生きていけないのよ…」
 
俯いた顔から、そんな悲しみの籠もった呟きがフェイトの耳に届いた。
 
「母さん!!」
 
「私を倒さなければ…あなたの大切な人が死ぬわよ?」
 
顔を上げてフェイトを見つめる表情からは、何も読み取れない。
 
「かあさっ…!!」
 
呼びかける前に、何かが脇を通り過ぎた。
それがプレシア自身だと気づく前に、叫び声が聞こえた。
 
すぐさま身を翻すと、そこにあったのは、
 
デバイスが折られ、腕から血を流して地面に倒れているなのはだった。
 
プレシアのデバイスは再び攻撃を与えようと、振り上げられていた。
 
《Haken Form》
 
「うおぉぉおおおお!!」
 
バルディッシュの声と同時にフェイトはプレシアに斬りかかった。
 
彼女のデバイスごと、右腕が飛ぶ。
 
プレシアは痛みに声もあげずに、フェイトから距離を取った。
 
「うわぁぁぁあああ!!!」
 
フェイトはそれを追いかけ、バルディッシュを振り上げる。
 
 
頭に血が上って、何も考えられなかった
 
直線的で単純な攻撃
 
簡単に避けるどころか、反撃だって出来るはずなのに
 
プレシアは動かなかった
 
 
金色の魔法刃がプレシアの胸を貫いた。
 
「…!!」
 
血飛沫が顔に飛んで、フェイトは理性を取り戻した。
 
「かあ、さん…?」
 
訳が分からない。
でも、うっすらと笑いながら、灰と化していった母親を見て、何故なのかを理解した。
理解できてしまった。
 
「あ、ああ…」
 
叫びそうになった口を閉じて、懸命に耐える。

 
そうだ、

 
まだ終わっていない。

 
否、

 
終わったのだから。
 

 

続く

 
 
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