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なんでこんなに長いんだ・・・

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転移を開始したのか、それ特有の状態になった。
同時に、全ての砲がそちらを向く。

私は痛みを堪えて、戦艦の前に躍り出た。
やはり、私のあとを、黒い炎が追いかけてくる。

一か八かに、賭けるしかなかった。

私は斜め上と左からでているまばゆい光を睨み付ける。

「フォトンランサー!!」

たった二つ、だが、いつも以上に魔力を込める。
大きさが変わらないが、数十倍をつぎ込んで、その主砲に放った。
同時に、バルディッシュを待機状態に戻し、自分の周りにはフィールド魔法を展開する。
身体が浮力を無くし、地面に向かった。

横目で見ると、私を追いかけてきた黒は方向転換し、上手い具合に二手に分かれていくのが見える。賭けは成功したようだ。
次の瞬間、凄まじい轟きに、もう何も聞こえなかった。

地上すれすれで自分の周りを囲ませていたAMFを解き、飛び上がる。
すると、敵艦二つは影も形もなくなっており、後ろを振り向くと、残像のような自艦が見えた。
あれだけ大きな魔力のかたまりが、発射寸前の砲撃に飛んでいったのだから、当然といえば当然だ。
上手くいって良かったと、内心ホッとする。
だが、それ以上安堵している暇はなかった。
今の数分で魔力の半分以上を持って行かれたのだ。
それに、この傷のままの長期戦は不利以外の何ものでもない。

あと、三体。

こちらに向かってきているのは二体だけだった。先程の爆発に巻き込まれたのだろか。

…広いところでの戦いは不利だ。
それに、主砲は壊されたものの、残り一つの戦艦は私を目の敵にするように乱射している。

私は再びバルディッシュを起動し、金色の矢となって、戦艦に飛び込んだ。
狭い艦内を飛び回る。知っている内部とはいえ、発砲してくる兵士達を倒しながら進むのは、至難の業だ。

傷口がジクジクとした熱い痛みを持ってくる。
押さえている左手の手袋は完全に湿っていて、熱い血潮が滴っていくのが、自分でも分かった。

思ったより、体力が持たなさそうだ。
頭も回らなくなってきている。どうすればいいか、考えられない。

フォトンランサーを前に放ち、再び自分にAMFをかける。
バルディッシュを床に振り下ろし、無理矢理向きを変える。
腕が軋む痛みを、歯を食いしばって耐えた。
そのまま壁ごと破壊して、目の前に見えた部屋に乗り込む。


そして、


銃声。


気づいたときには、私は壁に吹っ飛んでいた。
声にもならない掠れた音が、喉を通りすぎる。

左肩と、腰の辺りがひどく熱かった。

「…まさか、戦艦二つを墜とすとは思わなかったぞ」

嫌な声。
顔を上げようとするが、筋肉がひきつっているような痛みが走る。
いくら息を吸っても酸素が行き届かない。

身体を動かそうとするが、下半身の感覚がイマイチだった。
息を止めて下を見ると、鉄骨の様なものが下半身を埋めていた。多分、爆発の衝撃をこちらにはね返したのだろう。
魔法が使えないからと言って、魔導師の対策をしていないとは限らなかった。
やはり、思考が虚ろだったのだ。

「無様だな」

肥えた巨体が私の方へ歩いてくるのを、ぼやけた視界の中で見ていた。


魔力も、体力も残っていなかった。
カチャリと音がして、額に冷たいものが押しつけられる感触。

「流石の魔導師様でも、この距離からでは避けられないか?」

笑っている。

バルディッシュはなんとか離さずにいたようだが、同じように鉄筋に埋もれ、ひび割れていた。
フォトンランサーを制御できなくなったためか、僅かな魔力を頼りに先程の黒い炎がここに来ている。

「コレの構造をたった一太刀で理解するなんて、褒め称えたい程だ」

来たはいいが、魔力の小ささに黒い炎は弱く蠢き、人が姿を現した。
だが、虚ろな目はすでに生きている人間とは思えなかった。

「じゃあな」

引き金が、引かれる。

 

諦め、


そっと目を瞑る。

 

ごめん…

 

そう思った瞬間

 

目の裏に浮かんだものは

 

彼女の笑顔

 

こいつに、殺されるわけにはいかない…!

私は気力で強引に魔力を上げ、球体を二つ作り上げる。
それに気を取られて、彼が横を向いた。
咄嗟に身体を横に倒して拳銃を手で掴む。

「くそっ!」

魔力を電気に変換し、銃にそのまま高圧の電流を流した。
筋肉がはね回っているような、否、実際そうだろう。そして肉が焦げるような臭いがして、倒れた。
魔力の球は、二人の口の中へ誘導した。
そのまま、

「ファイ…ア!」

内部の爆発に耐えられるはずもなく、内臓が細切れになって吹き飛んだ。
部屋が赤く染まり、自分にも生暖かいぬるりとした液体が、振ってきた。

こんなギリギリの戦いをしたのは、いつぶりだったろう。

痛みの実感もなくなり、うっすらと笑みを零した。

私は魔力も気力も体力も底をついたのを他人事のように実感しながら、目を瞑った。

 

できれば、

 

もう一度彼女に

 

会いたい








続く

 

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