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最終決戦

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「なに…これ…?」

金色の髪が風に舞う。
フェイトはソレを吃驚して見つめた。

「君かい?コレの実験体というのは」

少し長めの髪に金色の瞳、そして、左目にモノクル。
その風体から研究者なのかもしれない。
だが、その満面には気持ち悪い笑顔が浮かんでいた。

「何が言いたい?」

私は高圧的な言い方をした。

「ソレは何だ?」

彼は言われて気づいたというようにああ、と頷いた。

「コレは、人工魔導師だよ」

耳を疑いたくなった。ということは、これは…

「君のご想像通り、コレは人間だよ。そして、私はジェイル・スカリエッティ。コレの制作者だ」

隣りにいる黒い物体を見た。
よく見ると、それは黒い炎のような魔力を纏った人だった。
だが、既に人と同じ知性があるとは思えないような表情をしている。

「魔導師は良質の兵士だからね。誰でも魔力を持てたらいいと思わないかい?」

「だからって…こんなことを!!」

怒りに満ちたフェイトの声を無視して、スカリエッティは続ける。

「今日が初実験なんだが、まだまだ改良すべきところがあってね。本当は止めて欲しいんだが、お偉いさんというものは自分が言うことを出来ない人間は切っていってしまうからね。それは困るのだよ」

突如、スカリエッティに横に開いた画面。そこには、先刻の人物。

『何をしている!?早く殺してしまえ!!』

「御意に」

こちらから強制的に閉じたのか、画面が消えた。

「君にこれ以上説明している暇はなさそうだ。残念だよ、有能そうな君なら私の言っていることを理解できると思ったのだが」

「……期待を覆して悪いけど、人を兵器として扱うことから理解出来ない」

「そうか…」

彼は一度俯いて、目を閉じた。

「残念だ」

瞼に隠された濁った金色が見えた瞬間、その黒い炎がフェイトに向かってくる。
フェイトはそれをくぐり抜け、一番上まで飛び上がった。

「サンダー…フォール!!!」

タメが弱いから、倒せるとは思っていない。
とりあえず、戦艦の主砲をどうにかしければ、転送は難しい。
今なお戦艦同士は攻撃を行っているが、まだ主砲は使われていないようだ。
実験体にすると言っていたことから、逃げ出さない限り主砲は撃たれないはず。

フェイトは、戦艦の一つに向かう。

「バルディッシュ!」

Zamber Form

フェイトはいつもより魔力を多く取り込み、刃を長くする。
すでに凄まじいまでの禍々しい魔力が、速さを伴ってフェイトに接近してきていた。

振りかぶる余裕もなく、そのまま主砲に突き刺す。

拍子に、激しい爆発音と共に爆風がフェイトを襲った。
髪の先が、焼けこげる臭い。

「くっ…!!」

フェイトが手を翳すと、自身を黄色の球体が包んだ。
なんとか爆風を逃れ、一つ息をつく。

あと、二つ。

フェイトが次の戦艦へ振り向く。

しかし

「っ!?」

体中に衝撃が走る。

何が起きたか分からずに、フェイトは周囲を見回す。
そして気づくと、黒い炎がフェイトを取り囲んでいた。

速いっ…!!

フェイトは逃れようと下を目指すが、逃れられない。

「よそ見している暇はないぞ!」

遙か下方にある地上で、そう叫ぶスカリエッティ。

倒していくしか…ない…っ

一度振り返ると、ソレの数は六体。
遅れた二体が手から刃を、はき出していた。

おそらくは誘導弾。避けても無意味だ。

フェイトはバルディッシュを腰の刀を抜くときのように、だが両手で握りを持ち、向かってくる刃に突っ込んでいった。

魔法刃が切れる間合いまで近づくと、急停止して背を向ける。
そして、そのまま振りかぶり、確実についてきている敵に向かって振り下ろす。後ろで魔力が弾けるような、音がして、前の2体を斜めに切り落とした…ように見えた。

実際、墜としたのは一体のみで、もう一体は寸でのところで避けていた。

「くっ…!!」

振り下ろしたままの体勢から、すぐに構えられるわけもなく、

「ぐぁっ…!!」

背中に、手から伸びた刃を突き立てられた。

(フェイトさん!!)

迫り上がってくるような痛みに一瞬意識が飛びかけるが、脳に直接響く念話が意識を押し留めた。
落ちていく身体を何とか踏み止まらせる。

(ティアナは自分の方に集中して…転送準備は出来たの?)

背骨に近かったが、そこに以上はないようだ。フェイトは流れ出る赤い液を左手で抑えた。

まだ、戦える。

でも、コレ全部を倒して、主砲を壊す事なんて出来ない。

(出来ています…けど…!)

(じゃあ、今すぐ、転送を開始して)

(えっ!?ですが…!)

(大丈夫だから。…私がなんとかする)

そうしなければ、皆ここで死ぬことになる。

(フェイトさん…)

(何度も言っているように、時間がないんだ。折角ここまで来たのに、こんなところで皆で犬死にしたいの?)

(分かりました…)

涙に濡れたような念話の切れ味。


心が、ズキリと痛んだ。



続く

 

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