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なのはさんが痛々s(ry

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こんな気持ち、初めてだ。



守ってあげたいと、強く思った。



儚げに澄んだ、蒼い空を。



 



「なのは…?」

「はい」

扉を開くと、なのはは私の方に目を向けた。
前よりはいくらか角の取れた表情。

「どう?調子は」

私はベッドに腰をかけた。

「はい。とてもいいです」

それでも、まだ根本に残るしこりは消えていないようだった。

どうしたら、彼女は心を開いてくれるのだろう?

この間見せてくれた一辺に、私は希望を捨てきれなかった。

この子が心から安心していられる場所を作ってあげたい。
それは何処でもいいはずなのに、私がそこに一番近いんじゃないかと思えるのが無性に嬉しかった。

「良かった」

「ありがとうございます」

「そんなに固くならなくて良いんだってば」

「えと…。でも、年上の人だし……」

「じゃあ、同い年の友達だったら何て呼んだ?」

彼女の視線が私から外れた。

「…フェイトちゃん……かな?」

若干控えめに言われたその羅列。

「じゃあ、今日からそう呼んで?」

「え!?」

「呼ばないと返事しないから」

空色が丸くなって、顔を赤らめた。

「フェイトさん!あまりからかわないでください!!」

「あ、普段は敬語もいらないから」

「あのですね…」

私は楽しみながら、それを無視した。
目を背けているが、慌てているのが手に取るように分かる。

「フェイトさん…?」

沈黙。
そして、諦めたような長息が聞こえた。

「…フェイトちゃん」

「何?なのは」

私が振り返ると、想像以上に照れくさそうに俯くなのはがいた。

「何でもない…」

「そう?」

また彼女の一面が見えたような気がして、くすぐったい気持ちが心を占めた。
恥ずかしがってまだ私を見ようとしないなのは。
そんな彼女も可愛くて、頭を撫でようと手を伸ばす。
なのははその気配に気づいたのか、ほんの少し顔を上げた。


そして、


「いやぁ!!」


振り払われた手を見て、振り払った手を見て。
更に彼女を見て、一時停止した思考が今起きたことを判断する。

「ご、ごめんなさっ…」

身体を震わせながらも、取り繕うように笑った。

「私こそ…ごめん……」

「私が悪いんですから、謝らないでください」

震えを隠そうとしているのか、本能的に避けたのか、彼女は私に背を向けた。
私自身も、彼女を避けるかのように数歩遠ざかってしまった。

「……もうすぐ、シャマルが来るから……また後で来るね」

「……はい」

本当はシャマルが来るまでここにいても良かった。
でも、私と彼女の距離を埋めるには、離れすぎてしまったように感じた。

彼女の小さな背が見えている視界を部屋のドアに遮断されて、私は悲しくもほっとしてしまった。

 

************


 

嫌な時間ほど長い、とは誰が言ったのだろうか?
例え嫌でも、過ぎて欲しくない時間は早足で進んでいくようだ。
気がつけば今日の職務は終わり、なのはの検診も終わっている頃合い。
私は足枷でもされているように重い足を、前へ前へと進ませた。

「……シャマル?」

医療室に向かい、見慣れた後ろ姿を見つけてフェイトは声をかけた。

「あら、フェイトちゃん」

「検診、終わったんですか?」

「ええ。今回も異常なし。もう普通の生活が出来ると思うわ」

シャマルは穏やかに笑った。

「……そうですか…」

ということは、彼女に会いに行かなければならない。
最初に何て話しかければいいのだろうか?
変に気を使ったりしたら、逆に悟られてしまうだろう。

「フェイトちゃん!」

後ろから声がかかって、深く嵌っていた思考が戻ってくる。

「何ですか?」

フェイトは素直に振り返った。

「…彼女に伝えなくていいの?」

「……いいんです」

本当は彼女のためにも言うべきなのだ。

でも…。

そう。ただのエゴの為にそれが出来ない。
ただの職権乱用、とも言うべき行為だ。だが、彼女だけ自分の部屋で預かっている事を考えると今更な気分でもある。

「でも……」

「あの子を…危険な目に合わせたくないんです」

「それは、」

シャマルは、言いづらそうに口を開いて、しかし、その言葉は口内から出ることはなかった。

「…シャマル先生には本当にお世話になっております。でも…これだけは、秘密にしておいてください」

追い打ちのように、軍人の顔をしてフェイトが言い退ける。
シャマルは納得してはいないようだったが、諦めてくれたようで、

「分かったわ…」

欲しかった返答をもらえた。

「でも…」

今度はシャマルがフェイトから身を翻した。
フェイトは何も言わずに次の言葉を待つ。

「あなたは、本当にその表情が似合わない子ね」

予想だにしていなかった科白に、フェイトは面食らって何を言っていいか分からなかった。
シャマルは顔だけこちらに向けて苦笑すると、またね、といつものように明るく言い残して、廊下の奥に見えなくなっていった。

似合わないって…?

その場で考えること数秒。
ハッと我に返り、自分が何処に行くべきだったのかを思い出した。

考えていても、しょうがないかな……。

あまり遅くなってしまっても、逆に気を使わせてしまうだろう。
とりあえず会って、話してもらえたら話してもらおう。

私はさっきよりは軽くなった足を、再び彼女のいる自分の部屋に向けた。

 

************


 

結果から言うと、取り越し苦労のようだった。
部屋にはいると、ベッドの脇に取り付けられている小さなランプがついているだけで、なのはは小さな寝息を立てていた。
時間を見れば、いつの間にか午前様を回っている。
当然と言えば当然だ。

フェイトは物音を立てないように椅子をずらして、なのはの傍に座った。
その内に目が慣れてきて、なのはの輪郭が柔らかな電球色に照らされて浮かび上がっている。

「なのは……」

呟く。
前に見た時よりも、顔色はかなり良くなっていた。
まだ幼さを残す寝顔に、何だか笑みが零れる。
しかし、

「んっ…」

突然、眉が寄せられて、呼吸が荒くなる。
悪い夢でも見ているのだろうか?

「なのは!?」

私は慌ててなのはに呼びかける。
肩を掴んで、軽く揺らした。

「なのは!!」

「ぅんっ…?」

うっすらと眼瞼を開いた。
私は少しばかりホッとしながらも、なのはの頬に手を伸ばす。

「いやぁっ!!」

彼女は目を見開いて、


また


私の手を振り払った。

 

怯えた目


恐怖に引きつった表情



「やめてぇ!!」


でも


「なのは!!私だよ!!フェイトだから!!」

暴れる彼女をギュッと押さえつけた。

「ぃやぁぁああ!!!」

動きが取れなくなってより恐怖が増したのか、腕の中で一層藻掻き始めた。

まるで最初に会ったときのようだと、私の心は何故か冷静だった。

「大丈夫……大丈夫だよ…なのは……」

「フェイト…さ……」

「うん。そうだよ…」

正気を取り戻したように私を見上げて、また大粒の涙を流し始めた。

「ごめん…なさっ…ぃ…」

「謝らなくていいから……」

私は落ち着かせるように背を撫でる。

「何が嫌だったのか……教えてくれないかな?」

彼女は私の服を強く握った。

「ゆめ…っ…見て……あそこに、いたときの……うっ…夢」

「うん…」

「怖く、て…、痛くて……」

「……うん」

「…それで…服が……あの人達と…同じ、だったから……」

ふと、自分の服を見る。
堅苦しいのが嫌で、普段は兵士と同じ服を着ている。
そして、服を見ただけで怯えるほど、それは彼女の心に深く根を生やしているのだと知った。

「また…痛いこと…ひっく……されるんじゃ、ないかって…こわ、くて…」

「分かったよ……。……私が居る限り、絶対そんなことさせないから……安心して」

「ふぇいとちゃ……は…怖くないって、…わかっ…るのに…!」

「うん…。大丈夫……。…大丈夫だから……」

それしか言えない自分が悔しかった。
彼女の痛みがこれで減ってくれるのだろうか?

「ふぇいと、ちゃん……うっく…ふぇっ……」

「なのは……もう遅いから、寝よう?」

「寝たく…ないよぉ……」

ぐずるなのはの頭を撫でて、そっとベッドの中へ戻す。

「じゃあ、今日から…私と一緒に寝よう?」

強ばった手を外して、私は上着を脱ぎ捨てた。
そのままベッドの中に潜り込み、また彼女に腕を回す。

「そうすれば、絶対悪い夢なんて見ないから…。ね?」

穏やかな声で言い聞かせた。

「本当…に?」

幼い子のような言詞に、私は頷く。

「絶対だよ」

しばらく彼女は欷歔していたが、すぐにさっきのような穏やかな寝息を立て始めた。

私は彼女の寝顔を見て、目を閉じる。

「なのは……」

 

この愛しさが、何なのか



私はすでに自覚していた。

 

これは



 

あってはいけないはずの



 








続く



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