はるみちシリアス
ぶっちゃけ訳分かんない(ぇ
あゆみさまリクエストです。本当にこんなんでスミマセンorz
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―――カラン。
グラスが鳴った。中の氷は随分溶けてしまっている。
はるかはそれに気を取られる事なく、ベッドの上から天井を仰いでいた。否、何も見ていなかった。
「 」
声もなく呟く。
はるかの身体はいつ終わるかも分からない、いつ終わるか知れない戦いに消耗しきっていた。
この間、みちるの告白を聞いてから、はるかは率先して戦うようになっていた。しかし、だからと言って今まで消極的だったかというと、そういう訳ではなかった。益々、という言葉をつけた方が妥当かもしれない。
はるかは早くこの戦いを終わらせたかった。みちるに犠牲者を出させたくなかった。だが、どうにも空回りしているような気がして、焦燥感に駆られていた。
「……はるか?」
はるかは怠慢な動きでみちるの方を見やった。浅葱色の瞳が心配そうにこちらの様子を伺っている。
何で…彼女が…?
あまり働かない思考回路をフルに使って考える。しかし、思考が終わる前にみちるが口を開いた。
「ごめんなさい。勝手にあがってしまって…。でも、通信にも出なくて…心配だったから…」
申し訳なさそうな、でも、心配そうな顔に、はるかは苦笑した。
「別に咎めてないし…大丈夫だから」
先程とは打って変わって柔らかい表情に、みちるは少し安心したのか、頬を緩ませた。はるかがベッドから立ち上がり、みちるの横を通り抜けていく。
「というか…こちらこそごめん。ちょっと体調良くなくて…ずっと寝てたんだ」
振り返りざまにまた強ばった笑いを浮かべて言った。みちるは険しくなりそうな顔を無理矢理隠した。
「そうなの?でも良かったわ。…少しは良くなった?」
何が良いのかはるかには分からなかったが、軽く頷く。
「折角来たし、何か食べてく?」
先程日が暮れたばかりだから、夕食を食べてきたということは無いだろう。そう言ってキッチンへ向かおうとするが、すぐにその歩みは止まる。
「あ…」
「どうしたの?」
はるかは近づいてきたみちるに苦笑いを浮かべて言った。
「いや…誘ったは良いけど、よく考えたら食材が…」
はははと笑うはるかを見て、ほんの少し緊張の糸が解ける。そしてみちるはそんなはるかを呆れたような表情で見、軽く嘆息した。
「そう思って……買ってきたわよ?」
「さすがみちる!!用意がいいね」
「まだ全快はしていないのでしょう?作ってあげるから、ベッドで休んでて?」
「……悪いね」
「……よくってよ」
再び横を通り、はるかはベッドに戻った。みちるが部屋から出て行く。
はるかは俯せで寝転がると、シーツを握りしめた。
………全部、ばれてる
様子が可笑しいのも聡い彼女ならすでに分かっているのだろう。だが、それを面と向かって口に出す勇気は無かった。そして彼女もそうなのだろう。
まさに針の上に立っているような感覚だ。
緊張は抜け切らなくて、でも、安らぎが欲しくて。
早く終わって欲しくて。
深く考えていると、鼻に空腹を誘う匂いが食欲を突いてくる。ここのところ全く減らなかったお腹が、みちるのご飯では過敏に反応するなんて、つくづく現金なやつだと思う。
はるかは上体を起こし、カーテンを開けた。相変わらずぐずついた天気にはるかは空を見上げる。灰色の空にはまだ光は無かった。だが、明日には…。
近づいてくる足音。間髪入れずにその人が現れる。
「はるか、出来たわよ」
「…ああ、うん。ありがとう」
はるかが振り返る。みちるははるかのいるベッドの横に来て先程はるかがしていたように空を眺めた。
「…何を見てたの?」
「ん?えーっと…未来…かな?」
少し戯けた風に言うその表情から、翳りが無くなっていた。みちるはそれを見て、はにかんで、年相応の笑顔を見せた。
「それで、どんな未来が見えたのかしら?」
「秘密♪」
「いいじゃない。意地悪ね…」
はるかがベッドを降り、ドアへと向かう。
「君にも見えるよ…きっと、すぐに」
「それはあなたが見せてくださるってこと?」
「さあ?」
「んもう!」
顔を見合わせて、二人はもう一度笑った。
扉が閉まったベッドルームには、汗をかいたグラスが一つ。
ほんのりを日差しを浴びて、キラキラと輝いていた。
Fin.
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