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プリ×プリのクロスオーバー小説
ギャグ


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「私が王子ですか?」

「ええ、そうどす」

この、風華学園に転入してきたばかりの原田千絵は、転入一週間目にして、何故か生徒会室に呼び出されていた。

「この学園は女子高やろ?やから、生徒は刺激に飢えてはるんどす。そこで!その学園生活に刺激と潤いを与える為、王子制度というもんを設けてるんどす。生徒の中から、美貌と適性を兼ね備えてるもんが選ばれるんどすが…原田さんはそれに当てはまったいうことどすなぁ」

目の前にいる生徒会長、藤乃静留は何故だか熱く語ってきている。

「はぁ」

千絵は適当に相槌を打った。

「失礼しま~す」

その時、ドアの向こうから気のない声が聞こえた。

「丁度ええな。入りぃ」

「ちわ~」

その言葉を受けて、ドアが開いた。

入ってきたのは、赤毛の少女……と、それに思い切り引っ張られて入ってきた、艶のある黒髪を持った少女。

「…」

ムスッと俯いたまま、誰とも目を合わせないようにしていた。

「二人共、新しい王子候補、原田千絵さんや」

生徒会長は、そう声を掛けた。

「あっそう。じゃあ、自己紹介でも」

そう言ってこちらを見る。

「私は結城奈緒。んで、こっちが」

そう言って、まだ拗ねたような表情をしている隣を小突く。

「……玖我なつきだ」

しょうがないとも言うような不服の顔で、ボソッと呟く。

「相変わらずやなぁ、なつき。何がそんなに嫌なん?」

「そうよ、あんた私服だって男っぽいじゃない」

「私は皆の見世物見たいになるのが嫌なんだ!!」

また、プイと顔を背けた。

「ま、こんなやつだけど、宜しく」

赤毛の少女が、申し訳なさそうに言う。それを受けながら、千絵は静留に食って掛かった。

「ちょっと会長!!王子って何をやらせられるんですか!?その前に私承諾した覚えないですけど!!」

「ああ。説明が遅くて堪忍な」

そう答えると静留は姿勢を直して、千絵を直視した。千絵も凝視されて少し気後れする。

「王子制度言うんはな…つまり学園の擬似アイドルどすわ」

「擬似アイドル?」

千絵が反復すると、静留は頷いた。

「つまりな、色んな行事やら部活動の応援などで男装して貰って、生徒達に精神的な潤いをみたいなもんどす。ついでにイメージを壊さんために学園生活でも色々気をつけなあかんこともあるんやけど」

「…それだけですか?」

「はい」

千絵は後ろを向いてなつきを見た。

「そんな事を何故嫌がるんですか?」

「…お前は王子の大変さが分かってないからそんな事が言えるんだ…毎日毎日気を使って…休む暇もない」

そのことを思い出したのか、急にやつれたような表情をした。

…そんなに大変なのか……

千絵は少し考えた。もしかしたらとてつもなく大変なことなのかもしれない。自分だって、そんな厄介ごとには巻き込まれたくない。

「勿論、見返りなしで言うんやおまへん」

静留の声が千絵の思考に割り込んできた。

「まず、王子の仕事が授業と重なった場合、公欠扱いになります」

「…あの…それがおいしい特典なんですか?」

「嫌やわぁ。今のは単なる付け合せのポテトサラダみたいなもんどす。メインディッシュはこれからや」

「?」

静留は千絵の前に数十枚の紙を取り出した。食券と書かれている。

「その2。毎月30枚、校内学食の食券が配給されます」

「ええっ!?それって毎日学食で昼を食べればお金要らずってことですか!?」

「そしてその3。学校での必需品、筆記用具や、体育服、靴や制服に至るまで全て支給品扱いになります。つ・ま・り、全てタダどす」

「タダ!?全部タダですか!?ほぼタダで、」

千絵は思い切り立ち上がって、机に手をついた。

「勿論どす♪」

千絵がストンと元の席に座った。

「タダ!!素晴らしきかなタダ!!」

千絵は感嘆の言葉を発している。

「釣れとる釣れとる♪」

静留はそれを見ながら、獲物を狙うかのような笑みを浮かべた。

「では、ダメ押し」

「えっ!?」

千絵は犬のように耳をそばだてた。

「これは一応特典とは関係ありまへんのやけど…うちんとこの写真部は人気のある生徒の写真販売をしてはりましてな…肖像権の使用料として、利益の一部を還元することになっとるんよ」

「?それってどういうことですか?」

「つまり、ちょっとしたお小遣いが入るということどす」

「…お、お小遣い?」

「王子になったらぎょうさん写真撮られることになりますから、たいそうな金額になると思いますえ?」

「どうやろ?王子にならん?」

静留はにっこり笑った。

「なります!!」

千絵は即答した。

「おい、原田!!」

「そんなオイシイ話だったら、勿論やります!!」

なつきの呼びかけを無視して呟いた。

「おい原田!!!」

次の呼びかけには耳を傾けて、なつきを見た。

「お前は何で物に釣られてあっさり引き受けているんだ!!」

ビシッと指を指して大声で叫んだ。

「だって、衣装着て愛想振りまくだけで必要経費がタダになるなら、悪くないんじゃない?」

千絵はしれっと言った。

「お前、プライドとかないのか!?」

「無いね」

先程とおなじくらいの速さの即答だった。

「切り詰めた生活を余儀なくされている学生の前に…そんなものは無い」

「あのな!髪は伸ばせないし、胸の形崩れるようなサラシは巻かされるし、あとお尻の方にも…もう散々なんだぞ!!」

「そんなこと言ってるから、女に襲われるのよ」

今度は奈緒が横槍を入れた。

「何だ!女としての拘りを持つのがいけないというのか!?」

今度は奈緒に向かってキャンキャンと吠えた。

「別に一生髪髪伸ばすなって言ってる訳じゃないし、あんた十分長いじゃない。ついでに形崩れるような胸もそんなにないじゃない?」

「そうどす。なつきの胸の形が崩れるようなサラシの巻き方はしてへんよ」

静留はうんうんと頷いた。会長、話が微妙にずれてる。

なつきは勢いに負けて、うっ、と押し黙った。

そして沈黙

「………それじゃ、原田よろしくお願いしますな。結城奈緒さん。」

その沈黙を破ったのは静留だった。

「あと、逃げられへんのやからな、なつき。ちゃんと仕事しなはれよ。そうせんと、単位落ちますえ」

なつきはそれを聞いて身体を強張らせた。

「単位落ちるんですか!?」

千絵が思わず言った。

「これだけの特典があるんやから、ちゃあんとやってもらわんと」

静留は清々しいまでの笑顔を見せた。この裏にどれだけ黒い部分が潜まれているのかと思うと、千絵は背筋に冷たいものを感じた。

「ちなみに一人逃げ出しはったら連帯責任やから♪特典はなしやで♪」

「「「ええっ!?」」」

王子三人は声を上げた。

「…絶対に逃げないで下さいよ」「あんた逃げたら承知しないわよ」

千絵と奈緒は凄みのある顔でなつきを睨んだ。

「ひぃっ!!」

なつきは化け物でも見たような声を上げた。


……これから先の学園生活、三種三様に先が思いやられるのであった。



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