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乃梨志摩
ラブラブ
某企画に捧げたもの

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************
今日はバレンタインデー。乙女が大好きなあの人に、想いの丈を伝える日。

さあ、こちらではどんなバレンタインが繰り広げられているのでしょう―――
 
 
 
さすがの女子高でも、友チョコというものがあるから、チョコレートの匂いがプンプンする。お姉さまや、妹にあげる人だっているだろうし。中には出来てる人だって……。まあ、匂いは三分その場にいると慣れるというから少しの辛抱かもしれない。だが…
 
どうしたもんかなぁ・・・?
 
二条乃梨子はとても困っていた。自分の腕の中を埋め尽くしている物体に。
まさかこれほどまでとは。去年は受験だったからといっても、一昨年もせいぜい4~5個だったチョコレート。それなのに、下駄箱に入っていた時点で6個。どうやって詰め込んだんだか。そして、ここまで来る途中や、教室でも何個も貰ってしまって、
 
紙袋持ってくるんだったなぁ……。
 
がっくりとうな垂れた。ここまで名前でチョコが貰えるとは思っても見なかった。(ブゥトン)である自分がこの状態なのだから、薔薇さま達はどれだけ貰っているのだろう。
きっとすごい量だろう。あ、でも確か紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)は、毎年受け取らないらしいからなぁ…。黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)は…激しいだろう。紙袋一つや二つじゃきかないんじゃないだろうか。
それじゃあ、白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)は…お姉さまはどうだろうか?かなり人気なんじゃないだろうか。
その前に志摩子さんがどんな風にバレンタインを受け止めているか分からない。積極的にこの行事に参加するとは思えないが、自分も何か作ってくるべきだっただろうか。っていうかお返しどうしよう。こんなにあったんじゃ…名前書いてないのもあるし、返せないじゃん!!まあ、見返りを求めてるわけじゃなさそうだし、いっか♪
 
と、色々と頭を巡らせていた。
 
「どうかしましたか?乃梨子さん」

しかめっ面をしている親友に瞳子は声をかけた。

「ああ、これがね…」

乃梨子は苦笑いしながら、瞳子に自分の腕の中を見せた。

「…随分とおモテになりますわね、白薔薇さまの蕾(ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン)

「そんな皮肉言わないで欲しいなぁ。真面目に困ってるんだから。…ねぇ、袋か何かない?あ、あとさ、お姉さまが去年誰かに何かあげたかとか言う話、ある?」

「…支離滅裂ですわよ、乃梨子さん」

そう言って、少し怪訝そうな顔をした。

「そうですね…袋はありませんわ。何とかカバンに詰めれば入るんじゃないでしょうか?それとも、チョコ渡している人から、渡し終わったところの袋を貰うとか…。そして、白薔薇さまですが、去年は自分のお姉さまにあげたとかあげてないとかの話はありますわ」

「なんで、そんな確証ないの?」

「目撃情報がないからじゃないですか?」

「……う~ん、どちらにしても、どうしよう」

「何がですか?」

「今日何も作ってないんだよねぇ。っていうか今日だって思い出したのが、下駄箱開けた時だし」

チョコが溢れ出てきたら、さすがに思い出すよ。

「だったらホワイトデーに特別なものを返せばよろしいんじゃありません?」

「でもさ、期待してたら可哀想じゃん」

「大丈夫ですよ。白薔薇さまですもの」

「そうだけどさぁ…」

「それに、乃梨子さんが、バレンタインデーにチョコ作ってきたら、それこそ以外ですわ。白薔薇さまもそのくらいのこと分かっていらっしゃるでしょう?」

「…前半をもう少し柔らかい表現にして欲しかったな」

乃梨子はまた苦笑した。
 
 
 
志摩子は自分の下駄箱から飛び出したものに驚いた。去年はそんなに貰わなかったはずなのに、どうして……?と、いうには白々しい。自分には白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)という称号があるのだから、当然といえば当然かもしれない。しかし、このままでは教室に持っていくのも困難だった。

「あの…白薔薇さま!!」

思案していると後ろから声をかけられた。振り向くと見知らぬ…多分一年生であろう子が緊張した面持ちで立っていた。

「はい…どうかしたの?」

柔らかく答えると、その子は持っていた紙袋を突き出した。

「あの…私、白薔薇さまのファンなんです!!だから、その…これ、貰ってください!!」

ここまで、されて断る人がいるのだろうかという剣幕で、その子は言った。

「…ありがたく受け取るわ。でも、お返し出来ないと思うから…ごめんなさいね」

「いえ!!いいんです!!そりゃこんなにいっぱいお返ししてたら神ですよ!!ありがとうございます!!ごきげんよう!!」

幾らなんでも、自分相手に緊張しすぎではないかと、呆然としながらその子が去って行くのを見つめていた。
数秒後、志摩子は我に返り、良く考えたら丁度いい袋を貰ったことに気づいた。あの子もそこまで考えていたのだろうか?
とりあえず深くは考えないことにして、志摩子は教室へ向かった。
 
 
昼休み
 
志摩子は、祐巳と由乃と一緒に昼食をとった。

「今年も祥子さまにチョコあげるの?」

由乃は唐突に祐巳に聞いた。

「うん!由乃さんは?」

「……一応作ったんだけどねぇ。令ちゃんのに比べたら・・・」

「令さまと比べたら誰も勝てないよ…気持ちの問題でしょ?」

祐巳は由乃の顔色を伺った。

「そうだよね!!気持ちなら令ちゃんに負けないもん!!よっしゃあ!やる気出てきたわ!」

急に元気になった由乃に祐巳は驚いた。
……何をやる気なのだろう、由乃さんは。チョコを渡すのに、そんなにやる気はいらないはずだが。朝のような、全然関係ないような間柄に渡す訳ではないのだから。

「志摩子さんは…?やっぱり乃梨子ちゃんにあげるの?」

由乃さんがニヤニヤしながら言ってくる。確信犯ね。

「ええ…でも、どうやって渡そうかと…」

「そうだねぇ、去年は偶然と言うかいつの間にか食べられてたって感じだったもんね」

祐巳さんは考えあぐねているように言った。

「う~ん、何か思い出の場所で渡すとかいいんじゃない?」

「馬鹿ね、祐巳さん。それじゃなんかお別れみたいじゃない」

「そっかぁ。でもそのくらいしか思いつかない…」

困り果てたような仕草をして、今度は由乃さんも考え出した。

「……いいかもしれないわ」

志摩子はふと、思いついたように言った。

「ありがとう。祐巳さん、由乃さん。参考になったわ」

……あそこなら誰も来ないし。

志摩子は乃梨子にチョコを渡すところを想像しながら、弁当のおかずを口に入れた。
 
 
 
放課後
 
 
今日の集まりはなかったが、志摩子さんがいるかもしれないので、乃梨子は薔薇の館に行こうと決めていた。昇降口に行って、下駄箱を開けると再び中に2つ程チョコが入っていた。……はぁ。それらを、友達から貰った袋に入れようと一つを取り出すと、紙切れが一枚出てきた。それを拾い上げて目を通すと、

 
――――あの木の下で待っています。
 
志摩子より――――

 
なんか顔が熱くなってきたような気がする。こそばゆい感じがして、その場でヘニャ、と笑ってしまった。すぐに気がついて、首を振る。ここでにやけてたらただの不審者だ。
周りを見渡して、とりあえず人が居ない事にホッとして、志摩子さんが待っているであろうその場所へ向かった。
 
 
やはり、その場にはマリア様―もとい志摩子さんが立っていた。冬の最中では桜も銀杏も素肌を晒して、寒そうだった。

「志摩子さんっ!!」

呼びかけると、嬉しそうな笑顔を見せながら志摩子さんは振り向いた。

「乃梨子っ」

乃梨子は傍まで駆け寄った。

「どうしたの?こんなところに呼び出して」

桜の木を見上げながら、乃梨子は言った。少し、いや、かなり白々しいかもしれない。

「……乃梨子に渡したいものがあるの」

その言葉を聞いて、乃梨子は、志摩子の方に向き直った。

「…はい」

志摩子は持っていた紙袋を差し出した。

「これは…?」

「マーブルケーキよ。今日はバレンタインでしょう?」

志摩子は柔らかく微笑んだ。だが、乃梨子は貰って嬉しそうな顔をしたものの、すぐに俯いてしまった。

「……乃梨子?」

少し心配になって呼びかけた。

「……あのさ、私…今日になるまで忘れてて…その…」

もごもごと顔を赤くして言う乃梨子が可愛くて、志摩子は抱きしめた。

「…別に気にしていないわ」

「あの…だからさ」

まだ話は続いていたらしい。志摩子は乃梨子の顔を見た。

「だから、ホワイトデーは楽しみにしてて!」

そう言って乃梨子は照れくさそうに笑った。

「…分かったわ」

笑顔で答えて、志摩子は愛おしげに頬に口づけた。
すると、我慢しきれないというように、乃梨子は志摩子に口づけた。今度は志摩子の方が赤くなる番だった。さすが、乃梨子。やられるばかりではない。

「…それじゃあ、帰ろっか」

そう言って抱擁を解いた。

「…ええ」

 
寒空の風は、いつもより温かく感じた。
 
今日はバレンタインデー。乙女が大好きなあの人に、この暖かい気持ちを伝える日。
 
 

Fin.


関係的にはこの二人の関係が一番好きだったりする。 
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