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聖蓉
ちょっとシリアスだけどラブラブ

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************


 
 ――――もし、魔法が使えたら、どうする?
 
「はい?何、急に?」

二人並んでソファに座ってティーブレイク(といっても日が暮れた後だが)をしている時に、藪から蛇にいわれたら、その返答は当たり前だろう。

「蓉子ちゃ~ん?勉強のし過ぎでどうかしちゃったのかな?」

「……別に」

蓉子は聖にからかわれて、少し拗ねたような声色になってそっぽを向いた。

「あれ?拗ねちゃった?」

聖が蓉子の表情を見ようと、回り込んできた。

「ばっ、拗ねてなんか…」

再び顔を背けようとしたが、顎を手で掴まれてそれは適わなかった。

「可愛いよ、蓉子」

いつになく真顔で言われて顔が赤くなる。

「何っで…!!」

「何が何でなのかな?よ~こちゃん♪」

「…別に!お風呂入ってくる!!」

これ以上顔を見合わせているとどんどんボロを出しそうなので、蓉子はその場を一旦離れることを選択した。

「蓉子ちゃん~」

「何!?」

少し怒ったようになっているのは、勿論照れ隠し。

「一緒に入りたい~」

聖はソファに俯けに寝転びながら、駄々っ子のように足をばたつかせた。いつもなら、お行儀が悪い、という言葉が出る筈だが、熱した頭では何も思いつかない。

「駄目です!!」
そう言って、足早に立ち去った。

「…素直じゃないんだから」

聖は仰向けに寝転んだ。


************


シャワーの熱で身体が温まると反比例して、頭に上った血の熱が下がってくる。

はあ……。

蓉子はため息をついた。自分でも何故そんな事を言ったのか分からない。急にそんな話をしたことがあったのを思い出しただけだ。…口に出したのが間違いだった。
 
  
蓉子が出てくると聖は同じ場所には居なかった。辺りを見回すと、窓が開いて、その外に人影。蓉子はそっと近づいた。

「……聖?」

近づくと、その影がうごめいた。

「…何?」

暗がりで見た彼女の眼は、少し闇に溶けていて、恐怖を感じてしまった。

「…聖!」

不安になって、小走りでそこへ駆け寄った。近くに来て、月明かりにみる彼女の顔はとても綺麗で、先程の影もなくなっていた。思わず蓉子は抱きついた。

「えっ!えっ、何!?」

いきなりのことに聖も面食らったようだ。この暗がりでも顔が赤くなっているのが分かる。

「……聖」

泣きそうな声色に聖はますます焦った。

「なっ!?…私なんか泣かすようなこと言った?」

「…違うの」

あの声は空耳だったようだ。でも、状況に変化はない。聖は蓉子をあやすように背中をさすった。

「……蓉子とずっと一緒にいられるのがいいなぁ」

場に似合わないような明るい声で、聖は言った。蓉子はその核心が分からずに聖の顔を見上げた。

「……いきなり…どうしたの?」

「さっき蓉子が聞いたじゃん。魔法が使えたらって…。だったら蓉子とずっと一緒にいられる魔法がいい」

蓉子は嬉しくて泣きそうになった。それを堪えて聖にさらにきつく抱きしめた。

「そんな魔法はいらないわ……」

「えっ…!?」

今日の聖は祐巳ちゃん並の百面相らしい。感情が顔にそのまま出ていて、蓉子は思わず笑ってしまった。

「なっ…!?蓉子!私は本気で…!!」

続けようとする聖の唇に自分のものを重ねる。初めてのようなバードキス。すぐに離れて見た聖の顔は、先ほどの蓉子並に真っ赤だった。

「別に、そんな魔法なんかなくても、私はずっと傍にいるわ。あなたが嫌がったって離れたりしないんだから」

今度は蓉子が、自分の言った事に赤面し、部屋の中へと戻ろうとした。しかし、それは適わず、後ろから抱きすくめられた。

「蓉子…ありがと。愛してるよ。私だって、蓉子が嫌だって言ったって離れないから♪」

耳元で囁かれて、頭がヤカンのように沸騰した。

「はっ、早く中に入りましょう!風邪ひいちゃうわ」

「は~い」


気のない返事をして聖は部屋に戻り、窓を閉めた。
 


Fin.
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