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今年も、バレンタインという日がやってきた。
確か、去年も一昨年も結局仕事で家にいなかったんだっけ…。
ミッドチルダではそんなに知られている行事ではないので、休みを取るのも少し気がひける。
今年ももらえるんだろうか…?
それは勿論なのはのチョコだ。さすがに喫茶店の娘なだけあって、すごいおいしい。
今年は、当日に貰いたいなぁ…。私も当日にあげたいし。
ちょうど休みは取れた。普段頑張って仕事するもんだ。でも、少し驚かしてみたいな…。
「そうしよう…」
フェイトは、一人執務官室で笑みを漏らしていた。
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計画は至ってシンプルだ。
まず、出張だと嘘をついて家を出る。
どこかでバレンタインのプレゼントを買う。
そして、なのはが帰ってくる前に帰ってきて、夕飯を作って待っている。
出張と言ったときのなのはの落胆した顔を見て少し心が痛んだが、悪戯をする子供みたいなワクワク感が何故か勝っていた。
「よ~し!完璧!!」
今日の夕ご飯はスパゲッティだ。
盛りつけはあまり得意ではないので、どうしてもこういうどう盛りつけても一緒なものになってしまう。
なのはと一緒に作るときは別だが。
スープも完成。後は…
「ただいま~」
お、この声は。
「おかえり~♪」
学校から帰ってきた愛娘を迎えに出る。
「あ、あれ!?フェイトママ…何で?」
返事が返ってくるとは思わなかったのか、ヴィヴィオは心底驚いた顔をしていた。
「びっくりした?二人を驚かせようと思って今日は休み取ったんだよ」
そう言って、ヴィヴィオを抱き上げる。
「すごいびっくりしたよ!なのはママもきっとびっくりするよ!!」
キャッキャッと喜んで私に抱きついてきた。
「もうご飯は出来てるから、あとはなのはが…」
ピンポーン
チャイムの音と同時にただいま~、という声が聞こえてきた。
「ナイスタイミング♪」
フェイトはヴィヴィオを下ろして、二人で玄関まで迎えに行く。
「「お帰りなさい」」
「ただいま…ってフェイトちゃん!?」
ヴィヴィオと同じような表情をしていて、思わず笑ってしまった。
「な、何笑ってるの?」
「いや、可愛いなぁと思って…」
素直に言うと、なのはは顔を真っ赤にしていた。
「二人ともイチャイチャ禁止~!!」
このまま二人の世界に入りそうになった万年新婚夫婦にストップをかけたのはヴィヴィオだった。
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「もう、本当にびっくりしたよ」
「ごめんごめん」
夕食もバレンタインのために買ってきたチョコレートケーキも三人で食べ終わり、ヴィヴィオはもう寝ている。
「でも…嬉しいな」
なのはが笑ってそう言った。
「そう言ってもらえて私も嬉しい」
「あ、そういえば…」
なのはは何かに気づいたように冷蔵庫に向かい、奥からタッパーウェアを取り出して持ってきた。
「はい、これ。本当は包むはずだったんだけど…」
なのははそれを開けて私の前にフォークと共に置いた。生チョコだ。
「ううん、なのはのチョコが食べれるだけで嬉しいよ」
そう言って、フェイトはそれを口に入れた。
「うん、すごくおいしい」
「良かった♪」
なのははフェイトがそれを口に入れている様子を、テーブルに肘をついて見ていた。
「なのはもいる?」
はい、あ~んと言って、フェイトはなのはにフォークそ差し出した。
「あ~ん」
少し照れながらも、なのははそれに口をつけた。
フェイトはそれを見て満足したように微笑んだ。
「来年もこう出来ると良いなぁ」
寂しそうにフェイトはそう言った。
毎年こうやって一緒にいられるわけではない。このあいだの誕生日だって危うかったのだから。
「出来るよ」
その言葉にフェイトは伏せていた目を上げた。
「私はフェイトちゃんが大好きだから」
それを聞いて、フェイトも照れたように笑った。
「そうだね」
二人は顔を見合わせて笑った。
また来年も
ずっとずっと未来も
一緒に
Fin.
とりあえず、フェイなのは万年新婚夫婦だよ。