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はるみちというか家族四人の話
ほのぼの、そしてラブラブ


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************
プロローグ

 
「さて、どうしようか」
 
はるかは自室で、雑誌を読みながら考えていた。
それは勿論ホワイトデーのこと。うちのお姫様達は非常に期待しているらしい。三人で話してるところ、聞いちゃったんだよね。聞かなかったからといって、お返しに手を抜くつもりは無いんだけど。
でも、毎年巡ってくるものに毎回変化をつけさせるのは大変だ。しかも普通より三倍のスピードでネタ(?)がなくなるんだから。
 
「どうしたもんかなぁ……」
 
はるかはベッドに横たわると、雑誌をそのページで開いたまま、顔に乗せて呟いた。
あえて、同じにするっていうのはどうだろう?節分みたいな感じで、毎年同じことをやる……だめだ。なんか逃げているような気がする。
はるかはそのまま数分間じっとしていた。そして思いついたように飛び起きた。

…そうだ!!

一人でガッツポーズする姿は、悪戯が成功しような子どものようだった。
 
 
 
 
せつなの場合
 
ホワイトデーと言っても休日ではないので、皆それぞれ仕事がある。
 
まずはせつなからだな…。
 
はるかはせつなの研究所へと車を走らせた。
 
 
「冥王さーん!!お客さんですよー!」

ちょっと遠めのところから同僚が呼んでいる。客が来る予定なんかあっただろうか?
せつなは疑問に思いながら応接室に向かうと、そこには良く見知った姿があった。

「どうかしたんですか?こんな所まで来るなんて」

声をかけると、サッと身を翻し、いつもとは少し雰囲気の違う笑顔を見せた。

「いや…、会いたくなってさ…」

今朝会ったばかりなのに何を言っているのだろう、この人は。

「昼休み、まだなの?」

「もうすぐですけど…。そんなに長くないですよ?」

次の言葉に気をとられてせつなはその続きを考えなかった。

「一時間くらいは?」

「まあ、出来ないこともないですが…」

「よし!じゃあ決まり!支度して来て。外で待ってる」

はるかはそういい残してすぐに背を向けた。一瞬のことに反論する暇もなく、これでは断りようが無い。
…こうやって女の子を引っ掛けてきたのだろうか。それにしても…本当に風のような人だ。
せつなはそう思って苦笑した。
 
 
「それで、何処に連れて行ってもらえるんですか?」

「着いてからのお楽しみ♪」

そんな会話をしながら数分車を走らせると、海岸線が見えてきた。そういえば海が近かった。そしてすぐに一軒、小さいけれども小奇麗な店に辿り着いた。

「ここは…?」

「やっぱり」

そう言ってはるかは少し笑った。

「そんなに研究所から離れてないのに…やっぱり知らなかった。せつならしいね。本当に仕事熱心だ」

「…はるかは色々な場所を良く知ってそうですね」

せつなは少し悔しくて、含みをこめて言い返した。すると今度は少し苦笑した後、女性を口説くときの、あの特有の眼をせつなに向けていった。

「そうだよ。せつなみたいな綺麗な女性をエスコートするためにはね」

……今日のはるかには勝てないかもしれない。せつなは笑顔のはるかを見てそう思った。
 
 
案内された席は窓側で、海が一望できるようになっていた。

「…綺麗ですね」

「そうだね。…とりあえず何か頼もっか?」

「ええ」

 
運ばれてきたものはそんなに気取っていなく、それでも店と同じように小奇麗なものだった。

「どう…?」

「おいしいです」

笑顔で答える。いつも研究ばかりで、仕事の日は昼食をこういうところで食べたのは初めてかもしれない。せつなはそう思いながら、美味しい料理達を口に運んだ。
 
 
「ありがとうございます。こんな素敵な場所に誘っていただいて」

「いやいや。いつもお世話になってるしね」

「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか。もうすぐ休憩も終わりますし」

「そうだね。…っとその前に…」

そう言ってはるかはポケットに手を入れた。不思議そうに見ていると四角い、白い箱が出てきた。

「はい」

「……これ?」

さらに怪訝な顔をしていると、はるかは可笑しそうに苦笑した。

「あんなに話してたのに……ど忘れしちゃったの?今日は何の日だっけ?」

そう言ってはるかはせつなの顔を覗き込んだ。するとせつなは合点がいったかのように、笑った。

「忙しくて忘れてましたよ。…ホワイトデーですね?」

「正解。はい、お返し」

そう言ってはるかはせつなにそれを差し出した。

「ありがとうございます」

そういって、せつなは早速それをつけてはるかに見せた。

「……似合いますか?」

「そりゃもう!せつなのような美人なら何だって似合うよ」

また言われた軽口にせつなは少し赤くなった。

「…それじゃ、今度こそ帰ろっか」

「ええ」

せつなは穏やかな笑顔を見せて応えた。
 
 
 
************ 
 

 
 
ほたるの場合
 
 
せつなを研究所に送り届けたあと、はるかは小学校へ向かった。今日は水曜だから、ほたるは早めに帰ってしまうはずなので、行き違いになっては困る。
はるかが校門に着いたのは、一時を少し回った頃だった。まだ帰っている子も少ない。きっとホームルームがすぐ終わったところが早いのだろう。
車を邪魔にならないように置いてあまり目立たないようにして待っていると、数分後にほたるが友達と一緒に出てきた。
「ほたる!!」

はるかが大声で呼びかけると、ほたるは友達と話を中断してこちらを見た。

「はるかパパ!!」

はるかの姿を確認すると、友達に「またね」といって、走って来た。そのままはるかはほたるを抱き上げた。

「お帰り、ほたる」

「どうしたの?今日は?」

「ほたるを迎えに着たんだよ。ほたるとデートしようと思ってね」

「本当!?やったぁ!!」

「それじゃ行こうか、お姫様♪」

はるかとほたるは車に乗り込んだ。

「はるかパパ~!どこ行くの?」

「ん?着いてからのお楽しみ♪」

助手席にいるほたるを横目で見ると、とても楽しそうで、こちらもなんだかとっても嬉しかった。
 
 
十数分後、はるかとほたるは目的地に着いた。

「動物園だ~!」

ほたるは何度もここに来ているが、全く飽きないらしく、よく行きたいと言ってくる。
だから今回はここにしてみたのだが、案の定だった。

「どこ行きたい?」

「ん~とね、フラミンゴのところ」

「OK」

はるかはそういうとおもむろにほたるを抱き上げて、肩車をした。ほたるは喜んで頭の上できゃあきゃあと騒いでいた。ほたるを落とさないように片手を離し、ポケットからパンフレットを取り出して、ほたるに渡した。

「んで、どっち?」

「こっち!」

ほたるは元気良くそちらの方を指差した。

「よ~し、レッツゴー!!」

はるかはそう言ってほたるに先導されるままに歩いた。
 
 
園内の動物をほぼ回ったときにはもう日が暮れ始めていた。

「楽しかった~♪」

ほたるは園内にあるカフェテリアで、ジュースを飲みながら言った。

「それは良かった」

はるかはそう言って、悪戯っ子のように微笑んだ。

「それで…僕がなんで、今日デートしようとしたか分かるかな?」

「うん!ホワイトデーでしょ?学校で皆言ってたもん」

ほたるは即答した。

「正解~♪正解した君にはこれをプレゼントしよう」

はるかはそう言って、ほたるに四角い、白い箱を差し出した。ほたるはそれを受け取って開けた。

「うわあ、すごい…!」

ほたるは感嘆の声をあげた。はるかはその箱からそれを取り出し、ほたるに着けてあげた。

「うん。良く似合ってるよ」

「ありがとう~!!はるかパパ!!」

ほたるはそう言ってはるかに抱きついた。

「よし、じゃあ帰ろっか」

「うん!」

元気な返事を後にして、はるかとほたるは家路についた。
 
 
************ 

 
 
エピローグ

 
「ただいま~」

「おかえりなさ~い!!」

みちるが帰ると、ほたるはすぐに玄関に向かった。

「おかえり、みちる」

後からはるかも来た。何も言わずとも、荷物を持ってリビングへと運んでいく。

「おかえりなさい、みちる。今日は遅かったですね」

せつなは夕飯の支度をしながら言った。

「ええ。ちょっと調子が良かったから…」

はるかはみちるの所へは行っていないようだから、これから渡すのだろうか。だったら早く二人きりにしてあげた方がいいかもしれない。

「さ、出来ましたよ。みちるも早く準備してくださいね」

「は~い」

子どものようにみちるは言った。そんな様子にせつなはくすりと笑いをもらした。
 
 
皆で食卓を囲んで、今日あったことなどを喋っていた。

「ねえ、みちるママとせつなママは何もらったの?」

ほたるがそう聞いてきた。せつなはみちるがまだもらっていないと思って、言葉を詰まらせた。

「……皆気づかないもんだね…」

誰かが答えを返す前に、はるかが少し飽きれたように笑った。

「何が!?」

ほたるは興味津々といった感じで、身を乗り出してはるかに尋ねる。

「今、皆身に着けてるんだけど……?」

そう言われて、相手を見てやっと気づく。

「ブレスレット…」

「正解!!」

みちるの返答にそう言って、はるかは紅茶を一口飲んだ。そういえば皆銀の細いネックレスをしていた。

「それ以外に気づくことは?」

「宝石の色が違いますね…」

一拍程間が空いて、せつなが言った。

「大正解!!…誕生石ってのも捨てがたいけど…皆にあった色にしたかったからね。ちなみに、みちるのがエメラルドで、ほたるのがベニトアイト、せつなのがアイドクレース、そしてぼくのがカイヤナイト」

はるかは自分の腕をあげてそれを見せた。

「去年とかは同じ場所で皆に違うものをあげたんだけど、今年は逆に場所を変えて、同じものを贈ってみた」

はるかはどこか得意そうにそう言った。皆が呆然としていたのを破ったのは、ほたるの喜びの声だった。

「うわぁ~!はるかパパ!!皆おそろいだね!!嬉しい!ありがとう!!」

そう言ってはるかに抱きついた。それを見て、みちるとせつなは顔を見合わせて笑った。

「そうね。ありがとう、はるか」

「ありがとうございます」

「いやいや。どうってことないよ。うちのお姫様達に喜んでもらえるなら…」

「さ、ほたる。自分の席に戻って。まだ残ってるわよ」

「は~い」

ほたるは潔くはるかから離れた。食事を再開してから、せつなは疑問に思っていたことを口にした。

「そういえば…みちるはいつプレゼントを貰ったんです?二人でいる時間はなかったはずですよね?」

そうせつなに言われて、みちるは少し考えるような素振りを見せた。そして、いつも外に見せる、早熟した雰囲気が嘘のような子どもっぽい笑顔で言った。

 
「内緒よ」
 


************

 
 
本当のエピローグ
 
みちるの場合
 
 
「はるか、どうしたの?」

もうすぐ寝ようと思って楽譜を片付けていた頃に、はるかはみちるの部屋に入ってきた。

「いや、今日は一緒に寝ようかと思ってね」

「今日はって…ほぼ一緒じゃない」

みちるはころころと笑った。

「いいわ。少し待ってて」

そう言って、みちるはお風呂に向かった。
 
お風呂から出ると、はるかはみちるのベッドに寝転がり、みちるが寝るときに読んでいる小説を読んでいた。

「…面白い?」

急に声をかけられて驚いたのか、がばっとベッドから起き上がり、みちるを直視した。

「いや…、パラパラ捲ってただけだから…」

はるかは照れくさそうに笑った。さっきの行動が恥ずかしかったのだろうか。

「それにしては随分と真剣だったじゃない。ベッドから飛び起きるくらいに」

弱いところを突くと、はるかは少し拗ねたような顔つきになった。

「ちょっと考え事しててね…」

「そうなの?どんな?」

「いや…別に良いんだ。それより、もう寝る準備終わったの?」

「ええ。歯も磨いたし。あとは寝るだけ」

みちるが答えると、はるかはベッドから立ち上がった。

「それじゃ、ちょっと行きたいところがあるから、一緒に来て」

そう言ってみちるの手を引いた。

「何処に行くの?」

「着いてからのお楽しみ」

そう言われたって家の中だからたかが知れている。すぐに目的の場所に着いた。そこはいつもみちるがバイオリンを練習している練習室だった。勿論防音で、ピアノが一つ中央に置いてある。
はるかはみちるを部屋の中へ促し、戸を閉めて、おもむろにピアノをセットし始めた。

「何をするつもりなの?」

みちるが尋ねると、はるかは微笑みで返した。
はるかはピアノの前に座り、曲を弾き始めた。
 
ブラームスのセレナーデ、第一番
 
初めは軽快で軽やかで。はるかが紡ぎだす音をとても心地よかった。
聞き入ってしまい、気づくと日付が変わるか否かというところだった。

 
「どうしたの?急に」

みちるははるかに近づいて、尋ねた。そうするとはるかはポケットから四角い、白い箱を取り出した。

「ハッピーホワイトデー!みちる」

「…ありがとう。はるか」

みちるはそれを受け取ると、中から取り出し手首に着けた。

「よく似合ってるよ」

そう言って、みちるの唇にキスをした。みちるははるかの背に腕を回した。はるかもみちるを抱きしめた。

「ねえ…?」

「何?」

「もう一曲弾いてもらえないかしら」

「勿論」

はるかは抱擁を解いて、もう一度ピアノに向かった。

「シューベルトのセレナーデ」

「了解」

曲が始まると、繊細な音が、静かで柔らかくて、どこか物悲しい曲調を誇張していた。

 
そして
 
この曲の方が、こんな月夜に合うんじゃないかと思った。
 



Fin.



 
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