第四章 再会
「今日の訓練はこれでおしまい!」
なのはは疲れ果てて地べたに座る四人にそう声をかけた。
「「「「…ありがとうございました!!!」」」」
「じゃあ、ちゃんとシャワー浴びてご飯食べるんだよ?」
「なのはさんは一緒に食べないんですか?」
スバルが疑問を口に出した。いつもなら、食堂でそろって食べるのだ。
「うん。今日はちょっと人を待たなくちゃいけないんだ」
「誰ですか?」
キャロが不思議そうに訪ねる。
「後で皆にも紹介するよ。これからフォワードに入るかもしれない子だから…」
「えっ!?本当ですか?」
エリオが訊く。
「うん。多分エリオやキャロと同じくらいかな?」
「へぇ、そりゃ楽しみだぁ~♪」
スバルが嬉しそうに笑った。
「じゃ、そろそろ行くね?」
「いってらっしゃ~い!!」
駆けだしたなのはを、スバルは地べたに座ったままだが元気に手を振って見送った。
「あんた、元気ねぇ…」
疲れて一言も話せなかったティアナが呆れたようにスバルを見る。
「まぁね♪そろそろ行こう?」
スバルは足の砂を払って立ち上がった。皆もそれに合わせて立ち上がる。四人は身体を引きずるようにして、教会内のシャワー室に向かった。
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なのはが教会の入り口に出ると、そこにはまだ誰も来ていなかった。
「確かシグナムさんが車で連れてくるって行ってたけど…」
そう思って近くのベンチに腰をかけた。すでに日は落ち始めていて、もうすぐ夜の帳に包まれるだろう。空の端に大きな満月が顔を出していた。
数分後、見慣れた車が近づいてきた。なのはが立ち上がり、車道の脇まで出る。車はそこに止まった。ドアが開く。
「すまない。道を間違えたようで遠回りしてしまった」
「いえ、いいんですよ。私も今来たばかりですし」
それを聞いてシグナムはホッとしたように笑った。シグナムは後部座席のドアを開いた。
「着いたぞ」
「…はい」
まだ幼さを残す、でも落ち着いた声が返事をする。そこから出てきたのは、長い金髪に紅い眼を持つ少女だった。
「初めまして、ソール・ベルリネッタ一等司祭です」
「初めまして、高町なのは一等司教です」
その少女はなのはに敬礼した。なのはも敬礼し返す。
第一司祭といえばAランクくらいなのだろう。こんなに小さいのに…となのはは感心した。
「そんなに固くならなくても良いよ」
そう言ってなのははクスッと笑った。ソールは一瞬目を見開くと、はいとだけ返事をした。
「それじゃ、行こうか?ソール。皆にも紹介しなきゃいけないし…」
「はい」
落ち着いた様子で、ソールはまた返事を返す。それは淡々と仕事をこなす機械のようだった。なのははその様子に苦笑する。
『何かあったんですか…?』
なのはは念話でシグナムと話す。
『いや、始めからこうだった。こういう性格なのだろう』
『そうですか…ね』
なのはがソールを見る。深い色をした紅い目の中に、一瞬翳りを見つけたような気がした。
瞬間、
何かが心の奥で疼いた。
「…行かないんですか?」
その言葉でなのはは現実に引き戻された。
「あ、うん。ごめんね」
そう言って、手を差し出す。彼女はそれを少しの間見つめると、戸惑いながらも取ってくれた。悪い子ではない。
「私は車を入れてくるから、先に行っててくれ」
「はい、ありがとうございます」
「…ありがとうございます」
二人はそれぞれに礼を述べると教会の中に入っていった。
この二つめの偶然が、さらに物語を発展させることになるのだった。
続く
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