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続きです。
もう真っ暗です。

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************



『フェイトちゃん』

「はや…て…?」

身体が重い。動かない。

『…』

何て声をかけたらいいのか分からないのだろうか、はやては視線を揺らした。

「おはよう……」

だから、私はそう話しかけた。

『お、おはようさん…』

戸惑いながらも、挨拶を返してくれた。

「いつの間にか寝ちゃったんだね…。今、何時?」

『まだ7時やよ』

「そう…。……なのはは?」

『なのはちゃんはお寝坊さんでな~。まだ寝とるよ』

「そうか…。珍しいな、なのはが私より先に起きないなんて…」

ハハッと笑う。

この会話を何人の人が聞いているのだろう。

局員達は皆聞いていたりして。それだったらすごいな…。

「市民の避難はすんだの?」

『…いや、まだや……』

「……じゃあ、もう少し生きてないとね……」

『そんなこと!!…冗談でも言わんといて……』

「…泣かないで」

今の私にはそんなことしか言うことが出来なかった。


その後、エリオやキャロ、クロノ達と話をした。

でも、なのはは結局来てくれなかった。

夕暮れ頃、通信が切れる。

静寂の中で、自分を絡め取っている蔓が、脈動しているのを聞いていた。

「ねぇ…バルディッシュ……」

傷口が膿んでいるのか、相当痛い。
虫も寄ってきている。

《What is it? sir》

「私さ…まだ…なのはの事好きなんだ…」

《……It knows》

「まだ…愛してるんだよ…?バカだよね…。もう振られて…何年も経ってて…ユーノと仲良くしているところ、何回も見てるのに……」

バルディッシュは何も言わない。

「でも…最後に、私はなのはを守れて、嬉しいんだ。あいつには、ユーノには出来ないことをしたんだって」

少し優越感に浸れたのだ。

まがい物でしかないのに。

「成人したら結婚するとか言ってたのにね……」

なのはの笑顔を見れるだけで良かった。

一番でなくても良い。

ただ、その大好きな笑顔を、ほんのちょっとでも見せてくれたら。

「私は…もう、なのはの笑顔を見れないんだね……」


惨めで


悔しくて


悲しくて


涙がボロボロと溢れてきた。

 

なんでですか?


なんで、いつも一番欲しいものが手に入らないのですか?


やっぱり、私はこの世界にいちゃいけないんですか?


何かを望んではいけないのですか?

 

「バルディッシュ…最後に、お願いがあるんだ…」

《Please say anything》


************


「はやて捜査官!!フェイト執務官のリンカーコアの魔力が急激に低下してます!!」

「すぐにモニターにつけて!」

すぐに大画面でフェイトの姿が映される。

「フェイ、トちゃん…!?」

『…どうか、した?はや…て…』

「な、何でそないなこと…!!」

画面の向こうフェイトが自嘲するように笑った。

『分かって…るよ…もう、市民の…避難なん、か、済んでるん…でしょ?』

やはりバレていたのか…。

実を言うと避難は一日目ですでに終了していた。

あんなことを言ったのは、我が侭だが、フェイトに少しでも長く生きて欲しかったから。

「済んどらん!!済んどらんから!!やから…!!」

フェイトの胸には大きな穴が空いて、血が滝のように流れていた。

傍にハーケンモードのバルディッシュが転がっている。

「フェイトちゃん!!」

後ろから、叫ぶような声が聞こえ、はやては振り向いた。

『なの…は…?』

もう既に輝きが無くなっていた目に、少しだけ、光が戻った。
はやてはなのはに画面の前を明け渡す。

「フェイトちゃん!!嫌だよ!!死んじゃったら…もう会えなくなっちゃうから!…駄目だよ!!」

『なのは…、ごめん、ね…』

逆流してきた血が口から吐かれる。

「フェイトちゃん!!」

『泣かない…で……。私はなのはの笑顔が見たい、よ…?』

「そんなの、無理だよ…!!だから、お願いだから…帰って来てよ!!」

彼女がフッと悲しそうな笑顔を見せた。

『なのは…じゃあね……』

通信が切れる。

「何事や!?」

「フェイト執務官自らが切ったようです!」

「早く再接続を!!」

「リンカーコア!完全に停止しました!!」

他の局員からそう叫ばれる。

大木を大きく映したカメラから見ると、町に伸びていた枝が収縮し始めていた。

「何で…何でやねん……」

「何で…フェイトちゃんが……」

そう思いながら、皆立ち尽くすのみだった。


************


葬儀も終わり、一週間が経った。

仕事以外の時は部屋に籠もりきりのなのはに、通信が入った。

「マリーさん?」

『急な連絡ごめんね…でも、ちょっと困ったことがあって……』

ちょっと来てもらえるかな?と言われて、なのはは管理局のデバイスの調整室に向かった。


なのはが失礼しますと言って中にはいると、マリエルが、首を傾げて画面を見つめていた。

「あ、久しぶり、なのはちゃん」

「お久しぶりです」

「いきなり用件で悪いんだけど…」

そう言って、マリエルはなのはに目の前の装置が見えるように一歩ずれた。

「バルディッシュ…?」

そこには、あの金色のデバイスが浮いていた。

「一応あそこであったこととか…解析したいのに…エラーコードが出て…」

マリエルがボタンを押すとピーピーという警告音が出た。そして、

《I have the message in Ms.Takamachi》

そう答えた。

「私に…?」

《It is only Ms.Takamachi that can hear this message(このメッセージを聞けるのはMs.高町だけです)》

「…マリーさん、すみませんけど…」

「うん、分かってるから…」

笑顔でウインクすると、マリエルは部屋の外に出た。

「いいよ、バルディッシュ」

《Message reproduction》

なのははその続きに耳を傾けた。

《えっと、もう、いいかな?
 …なのは、あの…フェイトです。これは、なのはに向けてのメッセージです。
 …上手く言えないけど、君に…なのはに会えて良かったって心から思ってます。
 なのはは私に始まりをくれた人で、大切な親友で…。
 だから、なのはに幸せになって欲しい。いつでも笑顔でいて欲しい。
 これって遺言になっちゃうのかな?もう一つ別にメッセージを作るつもりだけど…》

きっとそれは葬儀の時に聞いたものだ。
もう一つあるなんて思っても見なかった。

《それで…このバルディッシュは…なのはに持っていて欲しいんだ。
 君を見守っていたいから…私は……今でも…なのはが好きだから。
 こ、こんなこと最後に言うなんて本当に私ってずるいよね…。
 でも、なのはには私の本当の気持ちを知っていて欲しいんだ。
 もう…なのはの笑顔が見れないなんて…凄い悲しいよ。
 何度もなのはの一番になりたいなんて思ってたけど…罰が当たったのかな?》

途中から、少し濡れた声になっている。きっと彼女は泣いていたんだ。

《本当は怖いし…今だって痛いんだ…。なのはと会えなくなるって…思うと、悲しいし悔しい。
 でも、なのはが幸せに生きてくれたら…私は、なのはの代わりになれて良かったと思う》

代わりなんかじゃない。私だって悲しいし、苦しい。

《なのは…愛してたよ。バイバイ。お願いだから…幸せになって……》

録音の切れる雑音。

音が消えた。

《Hereafter,I was said that I must obey your instruction(これからはあなたの命令に従いなさいと言われました)》

「分かった…」

バルディッシュはなのはの方へ飛んでくる。
なのはは手のひらを出すと、バルディッシュはそこに止まった。

「よろしく、ね…バルディッシュ……」

《Yes madam》

なのははそれを胸元に持っていって両手で握り、崩れ落ちるように膝をついた。


何で笑ってあげなかったんだろう…。


何で私なんかをこんなに…。


「何で…」


なのはは嗚咽さえもでなくなるまで、その場で泣き続けた。




Fin.


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