捕捉されるときは、一本の長編として扱った方がよいかと。
最終章 温もり
私は木陰でのんびりと物思いに耽っていた。
「フェイト…」
名前を呼ばれる。
「何?なのは」
私はそう言って振り返る。
彼女ははにかんだように笑い、私の隣りに座った。
「病室にいなきゃ駄目でしょ?」
「だって…」
真っ白で何もない部屋なんて、有害とまでは言わないが、気持ち悪い以外のなにものでもない。だから勝手に点滴を早めて、終わったらそのまま出てきてしまった。木陰にいるのも、日には当たりたくないからだ。普段なら何でもないが、弱っている今はすごく体力を消耗する。
「なんか…夢みたいだったね……」
「そう…?」
実際まだ終戦してから一週間しか経っておらず、破壊された教会内部も森も雑然としている。
「…怪我は大丈夫?」
「うん。…もうほとんど治ったかな?」
銀で受けた傷は治るのに人並み以下の時間がかかる。まだまだ治りそうもない。
「痛くない?」
そう言って、怪我の場所を恐る恐る撫でた。
「んっ…」
「ご、ごめん!痛かった!?」
彼女が慌てて手を引っ込めた。
「大丈夫だよ…」
引っ込めようとする手を掴んだ。
私はその手を掴んだまま横になると、彼女の膝に頭を乗せ、目を瞑った。
掴んでいた手は額に置く。
「フェイト!?」
「このままで…いて欲しいな」
呼びかけの意味をすぐ汲み取って答える。彼女が一つため息をついたのが聞こえた。
「しょうがないなぁ、もう。……動けるようになったら、色々手伝ってよね…」
「……分かってるよ」
やっと、始まったのだから。
「フェイト…」
私は目を開いた。目の前に彼女の桔梗色の瞳。それは彼女の穏やかな心そのものだった。
「大丈夫だよ……」
私はいつの間にか険しい顔をしていたらしい。彼女が子供にするように私の頭を撫でた。
「絶対、皆仲良く暮らせる時代が来るよ。そのために私達は動いてるんだし、フェイトも頑張るんでしょ?」
「そうだね」
私は笑った。こんなに穏やかに笑えるようになったのも、彼女のおかげだ。
彼女といると、色んな感情が出てくる。
喜びも驚きも、悲しみも。……愛おしいという気持ちも。
ふと思いつき、私は彼女の膝からおりて、地面に寝転がる。
今度は何だろうと不思議そうに私を見ている彼女。
私はそんな彼女の腕を引いた。
「はにゃぁっ!?」
不思議な声を上げて、私に引かれるまま私の上に乗っかった。
それを機に、私は彼女を逃がさんといわんばかりに抱きしめた。
「ちょ…!?こんなことしたら…!!」
私は抗議の声を上げる彼女の唇をそっと奪った。
「こんなことしたら…何?」
私は笑顔で答えた。固まっていた彼女の顔が真っ赤になり、それを隠すように私の胸に顔を埋めた。
「ばかぁ…」
「だって前、私の唇奪ったから…仕返しだよ♪」
「だからって…!」
そこまで言って、再び顔を埋め、足をバタバタさせた。
「えっ…!ちょっと!!痛っ!痛いって!!」
流石に上で暴れられれば痛い。
「フェイトなんか知らない!!」
腕から逃れられ、背を向けられてフェイトは狼狽えた。
「ごめん!ごめんってば!!」
「本当に思ってる?」
なのはが頭だけ振り返ってフェイトを見た。
「思ってます」
正座をして、まさに反省のポーズでそう返す。
「じゃあ、ちゃんとキスして…?」
予想外の言葉にフェイトは顔を上げた。
「ね…?」
なのはがグッと寄ってきた。
「うん……」
フェイトはグッとなのはを引き寄せた。
二人の距離が更に縮まり、ゼロになる。
温もり
彼女の、温もり
もう絶対に離さない
この暖かさを
この温もりを
永遠に…
Fin.
こんな長いの読んでくださった方、ありがとうございます。
もっと色々感謝の言葉とか述べたいのですが、疲れ切ってるのでもう言葉が浮かびませんorz
すんませんorz
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