「はやてちゃ~ん!」
「おぉ~!なのはちゃん!」
亜麻色の髪を揺らしながら、手を振っている彼女に手を振り返す。
「珍しいな、こないなところで会うなんて」
「うん。ちょっと用事があってね…」
地上本部ではなく本局に用事なんて、そんなにないはず。
きっと彼女を迎えに来たと言ったところだろう。
「フェイトちゃん帰ってくるの、今回は何週間ぶりなん?」
だからカマを掛けてみた。
「えっと…三週間ぶり…ってえ!?」
かなり浮かれていたのだろう、簡単に引っかかった。
「な、なんで分かったの?」
「なのはちゃんの顔に書いてあった」
意地悪な笑顔で返すと、少し拗ねたように頬を膨らませた。
彼女は、こんななのはちゃんも好きなんだろう。
「はやてちゃん、最近輪を掛けて意地悪になったよね…」
「偉くなると意地が悪くなるんよ」
本当はそんなんじゃない。
彼女の隣にいられるなのはちゃんに、嫉妬しているから。
醜い感情も、伝えたい気持ちも、全部冗談で塗りつぶしてしまえ。
「ホント、意地悪だよね。フェイトちゃんみたい」
「へ?」
「フェイトちゃんも最近意地悪になってきちゃって」
「はいはい、惚気はそこまででええ」
フェイトちゃんの意地悪と、私の意地悪は違う。
好きな子は苛めたくなるってやつだ。……小学生の男子か。
「の、惚気なんかじゃないよ!」
「いや、惚気以外のなんでもない思うけど」
フェイトちゃんの近況を聞けると思うと、惚気もどうにか聞けるけど。
やっぱり辛い。
どう頑張ったって、私はなのはちゃんにはなれない。
だから、どう頑張っても、私は彼女隣にはいられない。
……ずるい。
「フェイトちゃん、あとどのくらいで帰ってくるん?」
「ん~、一時間ちょっとかな」
「じゃあ、ご飯付き合ってくれへん?私まだなんよ」
「うん、いいよ」
帰ってきたフェイトちゃんは、きっとまだご飯を食べてないだろう。
丁度よく、私自身もこれと言って予定はない。
彼女に会えるかもしれない。
「ありがとな。せやったらいくらでも惚気聞いてあげるわ」
「だ、だから違うってば!」
そう思うだけで嬉しくて、そして、胸が苦しかった。
Fin.