振り向かせる?そんなの簡単や。
「フェイトちゃ~ん!」
「ん?なぁに、はやて」
ほぉら、振り向いた。
「呼んでみただけ~」
「何それ~」
いたずらの引っかかったのを誤魔化すように苦笑した。
振り向かせるだけなら簡単。…物理的には。
「これから何処いくん?」
「あぁ、うん。お昼ご飯食べようと思って…」
嬉しそうに頬を緩ませるのは、きっと彼女と一緒に食べるからだろう。
私じゃ、あんな表情をさせられない。
「はやては?」
「へ?」
勝手に沈んでいった気持ちに歯止めが掛かった。
「お昼ご飯、まだじゃないの?」
「え、あぁ…うん」
このあとに彼女が言う言葉は分かっている。
「じゃあ、一緒に食べない?」
そして、この言葉に対する返答さえも、決まっている。
「二人のお邪魔は出来へんよ~」
手をヒラヒラとさせて、さっさと行けと合図する。
「私はシグナム達と食べる約束しとるねん」
本当は、そんな約束などしていない。
でも、こうでも言わないと優しい彼女は動かないのだ。
「…そう?じゃあ、また今度ね」
「ん~」
気のない返事で答えると、彼女は軽く手を振って身を翻した。
靡く金色の髪。
キラキラと、プリズムを作って。
こうやって見惚れてしまうのは、きっと私の方だけ。
去っていく背中を眺める。
私が名前を呼んだら、彼女はまた振り向いてくれるだろう。
でも、心は。
向いてくれないんだろうなと自分で諦めたら、なんだか泣きたくなった。
Fin.
片思いだね~