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「フェイトママ~~♪」
家に帰ってきた私にいきなり抱きついてきたのは、満面の笑顔の愛娘だった。
「ただいま、ヴィヴィオ」
驚きながらもフェイトはヴィヴィオを抱き返す。
「お帰りなさい、フェイトちゃん」
そう言って…笑っている。うん、笑っている、けど……その後ろの黒いオーラは何?
「ほら、ヴィヴィオ。フェイトちゃん疲れてるんだから早く離れなさい」
「え~!!折角久しぶりなのにぃ…」
頬を膨らますヴィヴィオが可愛くて、崩れた顔のままフェイトは頭を撫でた。
それが嬉しかったのか、ヴィヴィオは不意に頬にキスしてきた。
……空気が凍った。
「と、とりあえず荷物置きに行くから…ね、ヴィヴィオ?」
「…うん!じゃあ私が持ってってあげる!!」
そう言って、フェイトの鞄を奪うように取り、夫婦二人の部屋に持って行った。
「フェイトちゃん?服…」
「う、うん」
笑ってる。でも怒ってる。笑顔が怖いよなのは。何が何だか分からず、オドオドしながら上着を妻に渡す尻にしかれてる夫。
「あ~、なのはママずるい~」
ヴィヴィオが戻ってきてなのはを問いただす。
「別にずるいこと何かしてないよ?」
なのははまるで当たり前のことだと言わんばかりの顔をしている。実際に当たり前のようになっているが。
それに対抗心を燃やしたのか、
「私も~!」
といってフェイトの胸にダイブした。斜めからで不安定な状態だったのと、不意打ちでフェイトは声を上げて倒れた。
勿論、ヴィヴィオがフェイトの上に馬乗りな状態な訳で…。
「ヴィヴィオ!!やめなさぁ~い!!!そこは私の場所ぉ!!」
泣き声のような情けない叫びをあげて、なのははヴィヴィオをどかせようとする。ヴィヴィオはそれに反抗して更に抱きつく。
……あえて発言には触れない。
「い~や~だぁ~~!!」
「だ~めぇ~~!!」
「うわぁあ~~~~!!??」
引きはがそうとする妻。
はがされないように抱きつく娘。
それに挟まれて振り回されながらも為す術のない夫。
それでも大声で夫の耳元で攻防は続く。
「なのはママいつもくっついてるんだからいいでしょ~!!」
「そういう風にくっついていいのは私だけなの~!!」
「何で~~!!」
「夫婦だからだよぉ~!!」
「じゃあ私もフェイトママのお嫁さんになる~~!!!」
「…え、えええええ!!??」
されるがままだったフェイトが声を上げる。
「あれぇ?フェイトママ顔真っ赤だよ?」
そう言って艶めかしい笑顔を見せる。いつからそんな表情出来るようになったんだ。
「私…初めてはフェイトママがいいな~」
恥じらうように俯いていうヴィヴィオを見て、顔が熱くなるのが分かる。据え膳食わぬは…じゃなくてぇ落ち着け私。相手はヴィヴィオだ。いや、ヴィヴィオじゃなくてもなのは以外だったら駄目なんだけど…え~っと、何か胸も大きくなったよなぁ。すごい当たってるよ。これはわざとか?わざと当ててるのか?じゃなくってえええええ後ろからなんかすごいオーラがぁ嗚呼!!やばい。マジでヤバイ。よし、深呼吸だ。すうはあすうはあ。とりあえず落ち着いてなのはに助けを求めよう。
「なのはぁ」
変にひっくり返った声が出た。
「フェイトちゃんの…フェイトちゃんの……馬鹿ぁぁああ!!!」
泣きながら部屋からでていくなのは。
「ちょ、ちょっと待ってなのはぁ!!このまま置いていかないでぇ~~!!!誤解だよ~~!!!」
フェイトはまだ抱きついたままのヴィヴィオのせいで動けずに、手を伸ばすだけだった。っていうか何が誤解なんだ。
「ふぇいとままぁ」
抱きついたまま胸にほおずりをするヴィヴィオ。
「ヴィ、ヴィヴィオ?ちょっとどいて?ね?」
「フェイトママ…ヴィヴィオのコト嫌い?」
「いや、大好きだよ!!」
そんな目で見つめられて嫌いなんて言えるわけがない。っていうか実際大好きだし。
「それじゃ…いいでしょ?」
「うっ…」
そう言って、ヴィヴィオの顔が近づいてくる。やって本人の頬も少し赤くなっている。なのはと一緒だなぁ…。なんて半分諦めかけた思考で考える。あと数センチで唇が触れる…。
「…ヴィヴィオ?」
低い声が辺りを凍らせた。先程のオーラが何十倍にもなって帰ってきている。
見なきゃいけない。でも見たくない。
そう思いながらさっきなのはが出て行ったを方を機械のようにぎこちない動きで振り返る。
すると、
魔王がいた。
「ねぇ…ヴィヴィオ?なのはママ良いこと思いついたんだ?」
BJを着て仁王立ちしている魔…じゃなくてなのは。しかもエクシードモード。
「お話し合い(肉体言語)しようよ?ね?」
それを聞いてヴィヴィオが立ち上がった。
「いいよ。なのはママ…」
ヴィヴィオが以前の騎士甲冑と、刀に似た形状のデバイスを持っている。いつから持ってるんですかそんな物騒なもの。
「え…?二人とも…ちょ、え、本気d」
なのはがもう魔力を集めている。ヴィヴィオも迎え撃つ気まんまんだ。っていうかここでやるの?
「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」
「うわ、うわぁぁあああああああああああ!!!!!」
魂の叫びが響き渡った。
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「………そういう訳ですか」
ティアナは頬を引きつらせて笑いながら、フェイトを見る。
左腕は包帯を巻かれ固定され、頭にも包帯。そんな姿で出勤してきたら、誰でも不審に思う。どこの戦場に行って来たんだと。
いや、実際どこよりもひどい戦場だろう。
「いやあ、フェイトちゃんモッテモテやなぁ♪」
さっき丁度局内で会ったはやてが爆笑する。
「人ごとみたいに言わないでよ…はやて」
「だって人事やもん」
「うううっ…」
こんなに本気で人を可哀想だと思ったことはないとティアナは同情した。
「会議行ってくるね…」
でも
「(色々と)…頑張ってください」
としか言えないんです、すみません。
去っていく背中は、すごく憂いが漂っていた。
終