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何だろう?凄く甘えたい…。
隣で真剣な顔をして書類に目を通している愛しい人。今日は二人とも内勤で、久しぶりに仕事中も一緒の場所にいる。
「フェイトちゃん…」
私はいつの間にか彼女を呼んでいた。
「どうしたっ……!?」
振り返った彼女に抱きつく。
「な、なのは…!?」
「大好き…」
グリグリと頬をすり寄せる。二人であったらいつものことだが…
「何してるんですか…!?」
その隣にいたスバルが声をかけてきた。
今日はほぼ皆で書類整理しているのだ。当然フォワード達もシグナムもヴィータもいるわけで…。
「ん…どうし…!?」
大声に気づいてヴィータが自分の場所から顔を覗かせる。
「な、なにやってんだてめえら!!!」
二人の状況を見て頬を赤くしながら怒鳴った。
「え…え~と」
フェイトは頬を掻きながら弁明しようとするが、なのはは首に腕を回してフェイトの膝の上に乗っかってくる。
「な、なのはっ!今は駄目だよ!!」
「なんやなんや~」
部隊長殿も騒ぎに乗じてやって来た。
「いや…」
なのはが耳元で熱い息に言葉をのせる。
「フェイトちゃん…私のこと嫌い?」
そんな潤んだ目で見上げられたら何も言えない。っていうか周りの視線が痛い。シャーリーも面白そうに仕切りの向こうから覗いている。
「き、嫌いな訳ないでしょ?でも今しごt「それじゃいいよね~」」
またギュッと抱きついてくる。フェイトの顔はもう原色の赤に近い。周りも当てられたのか頬を染めている人達が多い。
「フェイトちゃん…」
急に声が艶っぽくなった。
「なのは…?」
次は何が来るのかとフェイトは構える。
チュ…
時が止まった…気がした。
「…!なのは…!!」
キャーという声も聞こえる。だが、フェイトの顔の赤みが何故か消えた。両手で頬を包み込む。まさか…と皆が思った。
しかし予想を裏返し次の瞬間、フェイトはなのはを抱き上げていた。
「ちょっとどいてくれる…?」
固まっているヴィータ達に凛とした顔で言い放った。まるで旧約聖書のように人の海が割れる。
フェイトはなのはをお姫様抱っこしたままそこから立ち去った。
「ど、どうするんだよ仕事…?」
その呟きだけが部屋に残った。
「ふぇ~いとちゃ~ん♪」
ベッドに寝かせてあげるとなのはは首に回した手をそのまま引き寄せようとした。
「なのは…」
その手をやんわり解くと、自分と、なのはの額に手を当てる。
「やっぱり…熱がある…。…無理しちゃ駄目だっていつも言ってるでしょ?」
呆れたように小言を言いながら、服を脱がしていく。
「してないもん…」
なのはは拗ねたように言う。まるで子供だ。フェイトはベッドの脇にあるパジャマを着せて毛布を掛けた。
「今日はちゃんと寝てなさい…私はこれから戻るけど…」
そう言うと、なのはは毛布から目だけ出したままフェイトの服の袖を引っ張った。
「行っちゃ…やだ…」
頬がまた熱くなる。フェイトは一つ嘆息をついた。
「……分かった。でもはやてに伝えなきゃいけないから…そしたらすぐ帰ってくる」
「…やだ」
「ほら、あんまり我が侭行っちゃ駄目だよ?すぐに帰ってくるから、ね?」
まるで子供を諭すようだ。フェイトは苦笑すると同時に、新鮮ななのはの仕草に可愛いと思ってしまった。
「…うん」
渋々袖から手を離す。
「いい子で待ってるんだよ?」
「…うん」
フェイトは頬が緩みそうになるのを懸命に抑えて部屋を出た。
少し恥ずかしかったけど、可愛いなぁ。
フェイトはルンルン気分でさっきいた場所へ戻っていった。
Fin.
きっと戻ったフェイトさんははやてやシャーリーに「何してたんですか!?」みたいなこと言われるんだ。
そんな妄想。