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「シグナム~」
シグナムが振り向くと、金色の髪を持つその人が駆け寄ってきた。無垢な笑顔を浮かべたその姿に耳と尻尾が生えているような気がしたのはシグナムの妄想の所為であることは言うまでもない。
「どうしたんだ?テスタロッサ」
「いえ…姿が見えたので…特に用事はないです」
フェイトはそう言って笑った。その屈託のない笑顔にシグナムは顔が熱くなるのに気づき、顔を背ける。
「そうか…」
少し声が上擦りそうになったが、なんとか持ちこたえた。
「何か久しぶりですよね?同じ六課にいるはずなのに…。皆にも早く会いたいなぁ」
「お前は捜査官でもあるからな。無理はしてないか?」
顔の熱を無理矢理退かせてフェイトの方を見る。
「してませんよ」
「そうか?お前も人のこと言えないからな」
「シグナムのいじわる…」
ぷうと頬を膨らませて拗ねるフェイト。そんな子供っぽい可愛い仕草をされてしまうと、再び顔に熱が上がってくる。そのように仕向けたのは自分であるが。
「シグナム?」
何も言い返してこないシグナムを不思議に思って、フェイトは少し訝しむようにシグナムの方に向き直った。
「…あれ?顔が赤いですよ!?大丈夫ですか!?」
フェイトは歩みを止め、シグナムの前に回り込む。
「だ、大丈夫だ。何でもない」
さっきよりも近くなった顔に居たたまれなくなって、必死で明後日の方を向くシグナム。だが、不意に柔らかな両手が頬を包み込んだ。無理矢理顔を見合わせられる。
紅い瞳に自分が映るくらい接近していたその顔に、シグナムは顔を真っ赤にした。
「なっ、なっ!?」
「シグナム…」
柔らかそうな唇が自分の名を紡ぐ。何故かその顔は更に近づいてくる。シグナムはギュッと目を瞑った。
――――コツン
額に何かが当たる。数秒後それは離れて、手も離された。
「熱は無いみたいですけど…気をつけてくださいね?」
「お、お前……!!」
ブルブルと震える手で指を指す。顔はまだ熱を持ったままだった。フェイトはきょとんとしたままそんなシグナムを見つめる。
「?」
「な、何でもない…!!!」
シグナムはそのまま踵を返すと、先をどんどん歩いてゆく。
「どうしたんですか~?置いてかないで下さいよ~!!」
フェイトはその背を小走りで追いかけていった。
Fin.
シグフェイの時のフェイトは天然だと思う。あとはヘタレだけど王子様。
キャロとヴィヴィオの時はママが入っちゃうけど結局王子スキルが勝手に発動(というか自覚なし)して惚れさせてしまうのだと思う。