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「何飲んどるん?」
「コーヒーだよ」
「コーヒー好きなん?」
「ん~、紅茶よりは」
珈琲と紅茶
「はやてちゃん?何飲んでるの?」
「コーヒーやよ」
「あれ?はやてちゃんってコーヒー好きだっけ?」
学校の屋上で、いつもの食事中。
だが、いつも私がしない行動になのはちゃんが気づいた。
「ん…まあなぁ……」
本当は好きじゃない。苦いし、匂いもあまり好ましくない。
「それブラック?よく飲めるね」
私は飲めないよ、となのはちゃんが笑った。
「慣れれば平気や」
そうはいっても、私もブラックは今日初めて飲んだのだが。
「大人だね~」
「そんなんやないよ。これは個人の好みやから」
個人の好み。だから、私が無理して合わせる必要など無いのに。
「フェイトちゃんも小さい頃から飲んでたよね~」
一つ胸が高鳴る。午後から管理局に行っている彼女は、ちょうどここにはいない。
「どうしたの?」
なのはちゃんが不思議そうに見つめてくる。
「いや、何でもあらへんよ!」
慌てて答える。どのくらい呆けていたのだろう?
「ね、ちょっと頂戴?」
「ん、ええよ」
はやてはなのはに缶を渡した。彼女は恐る恐るというふうに口づける。そして
「にが~い」
顔をしかめてそれを表現していた。それを見て、はやては笑いを漏らした。
「あ~!今笑ったでしょ?」
「笑ってへんよ~」
澄ました顔で缶を取り返し、一口飲む。
やっぱり苦い…
「はやてちゃんだって苦そうじゃない」
「そんなことあらへん」
少しムキになって言い返した。
「別に…無理しなくても良いんじゃない?」
先程の非難するような声と違い、諭すような言い方に、はやてはなのはの方を見た。
「フェイトちゃんにも勧めてみれば?紅茶」
「でも…!」
「フェイトちゃん結構食わず嫌いなところあるから…」
「…そうやね」
無理、する必要ないかな?
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「これ…?」
「うん、紅茶」
「でも…」
「ちょっと飲んでみいひん?」
「う、うん」
はやてが折角出してくれたのを無下にも出来ず、フェイトは眉をハの字にしいてそれを口にした。
「あ…おいしい」
「え!?ホンマ!?」
「うん、おいしいよ。これなら何杯でも飲めそう」
彼女が笑った。決して無理して言っている顔じゃない。そんな笑顔を見れて、私もつられて笑った。
「せやったら何杯でもおかわりどうぞ」
二人で笑い合う。
寒空の下の暖かい紅茶。
珈琲はもうちょっと先。
Fin.
つい最近まで紅茶は甘いものだと思ってた。
フェイトはきっと・・・リンディ茶のような紅茶を飲まされたんだと思う。