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今年も、バレンタインという日がやってきた。
今年ももらえるんだろうか…?
それは勿論はやてのチョコだ。去年も貰ったがすごくおいしかった。
去年はすっかり忘れていて、当日気づいたんだよな…。
「よし…」
今年は私も作ろう、とグッと拳を握った。
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「あの、はやて?」
これは一体どういう状態なのだろうと、フェイトは顔を赤くしながら膝の上にちょこんと座っているはやてを見た。
「ん~」
はやてはフェイトをそのまま見上げながら、背をフェイトに預ける。
こんなに甘えてくるなんて、珍しいかもしれない。
「フェイトちゃん…どないした?」
「え、いや何でも」
「さよか」
そう言って、またテレビの画面に顔を向けた。
何か微妙なシチュエーションだが、今渡して良いのだろうか…。
「はやて」
「何?」
今度は振り返って、顎を肩に乗せてきた。
すいません、あげる前に貰って良いのかな?これ。
「はやて、はい」
はやては一度離れると、後ろ手に渡されたそれを見た。
「これ…」
「うん、チョコだよ。はやてよりは上手くできてないと思うけど…」
頬を掻きながらそう答える。
はやてはそれをおもむろに開けた。綺麗に並べられたチョコがそこにある。
一体何をするのかと見ていると、はやてはそれをフェイトに突きだした。
「え~と、何して欲しいのかな?」
「あ~ん、して」
マジですか?
なんでこんなに可愛いんだろう。どうしようもうマジで。
フェイトの脳みそはもうキャパオーバーしている。
「早くしてぇ」
目を瞑ってあ~んと口を開けてくるはやて。
フェイトは一度深呼吸すると、突き出された箱からチョコを取って、
「はい、あ~ん」
口に入れてあげた。
はやては閉じていた目を開いて、それを味わうように咀嚼する。
「うん、おいしいなぁ。おおきに、フェイトちゃん」
満面の笑顔を見せてくれた。
「どういたしまして」
私も嬉しくなって笑う。
だが、はやては何かを思い出したように立ち上がって、キッチンに向かっていった。
「フェイトちゃん」
小走りで戻ってきたはやては手に小さな箱を持っていた。
すぐにまた私の膝に座り直すと、その中から茶色い塊を一つ摘んだ。
「はい、あ~ん」
「あ、あ~ん」
何で今日はこんなに積極的なのだろうか。
でも、こんなはやてを見れるのも私だけだと思うと、にやけてきてしまう。
「おいしい?」
「うん、すごく」
素直に答える。はやてがまた微笑んだ。
本当は私が驚かすはずだったんだけどなぁ。
でもま、いつもと違うはやてが見れて良かったな。
「はやて。大好きだよ」
そう言って口付けたそこは、チョコよりも甘かった。
Fin.
きっとこのはやてはたまには甘えてあげないとという助言を誰かから受けたと思われる。