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今年も、バレンタインという日がやってきた。
高校生の頃はそれはもうなんというかな数だったが、大学になってそうでもなくなった行事だ。
今年も彼女はくれるんだろうか…?
それは勿論蓉子のチョコだ。
何か…毎年もらうだけではつまらないような気もする。
何故かいつも貰う側に徹していたから、あげてみるのも新鮮でいいかもしれない。
「そうしようかな…」
聖はそう呟いて立ち上がった。
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「蓉子~!」
私は駅の変なモニュメントの下で待っている蓉子に声をかけた。
「遅いわよ!!」
「ごめんごめん、ちょっと準備に時間掛かっちゃって」
「もう、いつもそう言ってるじゃない」
今回は本当なんだけど、ということは胸の中に閉まって、あははと笑う。
「笑ってごまかそうとしないでよ」
少しは何か期待をして待っていたのだろう。今日はなかなか許してくれない。
「ごめんごめん。何か奢るから、許してよ」
両手を顔の前で合わせて少し大げさに謝る。
「しょうがないわね…」
どうやら許してくれたらしい。
「どこいく?」
「そうね…とりあえず、あそこから」
今日のデートはウィンドウショッピングに決まったようです。
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「えーと、蓉子さんこれはまだ行くんですか?」
蓉子がこんなに買い込むなんて珍しい。余程楽しみにしていたのだろう。
やっぱ一時間は遅れすぎですね。
「今日は…これくらいでいいかな」
はい、よろしくお願いします。
「じゃ、じゃあ、美味しい店知ってるんだけど、行かない?」
頃合いも良くそろそろ夕飯時だ。
「お腹も空いたし…そうしようかしら。どこ行くの?」
「凄く店も綺麗だから、きっと気に入るよ♪」
私は蓉子の手を引いて歩き出した。
場所はここからそんなに遠くない。予約もしてあるので、すぐに入れるはずだ。
「え…?ここ?」
う~ん、確かに大学生が入るには少し勇気がいるかもしれない。
「大丈夫、大丈夫!」
私は先に入って、迎えに出たウェイターに名前を告げる。
「佐藤様ですね。こちらへどうぞ」
すんなりと席に座れた。
「もしかして、予約取ってたの?」
「うん、蓉子を驚かせたくてね」
「バレンタインにあなたが何かしてくれるなんて、珍しいわね」
チョコも用意してあったりして、と笑いながらメニューをながめ始めた。
その通りですよ、蓉子さん。
「よく分かったね」
「え?」
冗談で言ったつもりだったのだろう。かなり驚いている様子だ。
「はい、蓉子。大好きだよ」
「え、あ、ありがとう…」
放心したままそれを受け取っている蓉子は随分と新鮮だ。
「どうしたの?」
「いや、その…あ、はい、これ」
蓉子自身も鞄から箱を取り出した。
きっとこんな風に渡すとは思っていなかっただろう。今日はすごい収穫だ。
とりあえず、こんな蓉子を見ながら食事が出来て、私は満足です。
Fin.
聖蓉は、何か長いこと付き合ってる恋人みたいな、そんな感じ。