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「たっだいま~!!」
元気な声と共に亜麻色の髪のその人が帰ってきた。
「お帰りなさい、エイミイ」
「フェ、フェイトちゃん!?」
いきなり予想外の人が出迎えに現れて、エイミイは少し戸惑った。
「久しぶりだね。丁度暇が出来たからたまには里帰りと思って来てみたんだけど…」
フェイトはそう言ってエイミイの持っている袋の一つを持ち、二人はそのまま並んでリビングに向かった。
「そういえば…今日は艦長がうちの子とアルフ連れてお出掛け行ったんだったよ。いやあ~タイミング悪かったね~~。でも夕方くらいには帰ってくるよ」
リビングにつくと、エイミイは夕飯の買い物らしいそれを冷蔵庫につめていく。
「エイミイ…母さんはもう艦長じゃないけど…」
「そうなんだけど~。ど~も慣れなくってねぇ~。あ、ご飯は食べていくの?」
「うん、そのつもり」
フェイトはそれを見ながら答える。詰め終わると、いつもの溌剌とした笑顔のまま言った。
「フェイトちゃん、一緒にお風呂入ろう?」
急なことに思考がついて行かない。
「え?えぇ!?」
「そんなに驚くようなこと?ほら、最近会ってなかったから裸のお付き合い♪」
何でそんな経緯になるのかさっぱり分からない。
「だってもう子供じゃないし…」
「何?まだ髪洗えないの?なのはちゃんに洗って貰ってるとか…」
「そ、そんなことないって!!」
「慌てるところなんかまた怪しいなぁ~~」
エイミイが近づいてきてフェイトを下の方から訝しげに見る。
「ま、いいや!!さぁ行くぞ~♪」
かけ声と共にフェイトの腕を自分の腕を絡めて、引きずるように風呂場に向かった。
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「うわぁ~♪やっぱスタイルいいよね~」
エイミイは風呂に浸かりながら、身体を洗っているフェイトを肘をついて見つめている。
「エイミイ…そんなに見ないでよぉ…」
フェイトは少し赤面しながら目を逸らして、身体を洗うことに専念しようとする。
だが、視線が思いっきり自分に刺さっていて無視するにも無視できないでいた。
「じゃあ洗ってあげるよ~♪」
エイミイが風呂から出て、フェイトの持っていたスポンジを取り上げた。
「あっ、ちょっと!!」
「まあまあ♪たまに何だからやらせてよ~~」
そう嬉しそうに言いながら、フェイトの背中を流し始めた。フェイトは諦めたように、少し嬉しさを隠すように軽く嘆息するとなのはの時とは別の心地よさに身を任せた。
「フェイトちゃん…最近どう?無理してない?」
先程とは違う声色に、フェイトは少し身構えた。
「大丈夫だよ…」
「本当に?」
「大丈夫だよ。ちゃんとしてる」
「そっか…良かった…」
その優しい声はお姉ちゃんというのが正しいような気がした。
「はい!!終わり~~♪気持ちよかった?」
エイミイは仁王立ちで満足そうに笑った。
「うん、ありがとう…」
フェイトの照れながらお礼の言葉を返した。今度は洗い終わったフェイトが風呂に入る。
「それじゃ、私ご飯の支度するから先に出るね」
「だったら私も…」
フェイトは湯船から立ち上がった。
「まだ暖まってないでしょ?それに、今日は久しぶりなんだからゆっくりしていきなよ~」
エイミイは立ち上がったフェイトの肩に両手を置き、再び風呂の中に戻した。
「うん…分かった」
「よろしい!!」
その返答に満足したのかうんうんと頷くと、風呂から出て行く。ドアを閉めるとき、一度フェイトの方を向き直って、
「みんなフェイトちゃんのこと大好きなんだから…心配かけちゃ駄目だよ?」
そう言って優しく笑った。その顔は妹を心配している姉のような、そんな顔だった。フェイトはそれがくすぐったくて、エイミイがいなくなった後も数分顔を赤らめていた。
風呂から出たあとすぐに、リンディ達四人が帰ってきて一気に騒がしくなった。
久しぶりの喧噪に、フェイトは笑顔が絶えなかった。
自分を大事に思ってくれている家族に囲まれて。
Fin.