始まりも
終わりも
いつの間にかやってくる
それがどんな結果だとしても――――――
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フェイトが甲高い音で目を覚ました時、複数の画面が紅く点滅していた。
何か言いたげだったなのはをそこに置いて、ブリッジに向かって廊下を一人急ぐ。
部屋に飛び込むと、一言。
「状況は!?」
「敵艦三艦が、接近中。船の制御を乗っ取られましたっ…」
「なんとか戻せないか!?」
「今、やっているんですが…!!」
途端、戦艦がぐらりと揺れたような気がした。
「強制転送に入っています!」
「くっ…」
何もない空間を映し出していたカメラに、一瞬で茶色い土煙が現れた。
遠くに
「…解除成功です!!」
一人が叫ぶ。
それと同時に右手に画面が現れ、音で通信を知らせた。
フェイトは無言のまま、その回線を開く。
現れたのは、
「モティズ少佐……」
『久しぶりだな。フェイト・T・ハラオウン一尉』
その口元には笑みが浮かんでいたが、その裏を返したら、高慢なプライドが出てくるのだろう。
「何かご用でしょうか…?」
『…あくまで、白を切るつもりだな?』
「私は、私が正しいと思ったことをしただけです」
『戦場での言い訳にはならんな…』
苛ついたように、下方を向く。
『上官からの命令違反。序で、亡命。此に因り、鏖殺命令に処する』
「それに…甘んじるわけがありません……」
『精々足掻くがいい』
人の命を何とも思わぬ冷笑が、ここまで背筋を凍り付かせる物だとは知らなかった。
向こうからか、通信が切れる。
自分たちより一回り大きな戦艦三つを墜とすことなんて不可能に近い。
いや、彼女となら…。
「フェイト隊長!戦艦から魔力反応です!!あれは…人?」
カメラを監視していたティアナが声を上げる。
成程、形は人型だ。
だが、黒い炎に包まれているように、それは不明瞭だった。
きっと、新しい兵器の実験台にでもするつもりなのだろう。
足掻く…か……
どうしようも無い時も、人は笑うしかないらしい。
「総員戦闘態勢…!ブリッジの者は急いで転送準備!準備が出来たら可能な限りスプールス近くに転移!!そのまま最速で逃げ込むんだ!!」
ここからなら、半日もかからない。
向こうにとってもこれが最後のチャンスだったのだろう。
「ですが…転移の前に撃たれては…!!」
どでかい主砲三つに囲まれているのだ。転移の様子を見せたら、すぐに砲撃を開始するだろう。
例え艦内から総攻撃をしても、三つともとめるのは難しい。
「私が…行くから……」
「そんなことをしたら、隊長が…!!」
当たり前だが、艦内にいなければ転送はされない。
「……じゃあ、私は行くから……」
言葉を止めたと言うことは、ティアナ自身も分かってくれているのだろう。
私は身を翻した。
「フェイトちゃん…?」
消え入りそうな声に振り向き、この間と似たような状況に苦笑した。
でも、何もかもが違う。
「なのは…」
不安げに瞳が揺らいでいる。
今の彼女は、ついてくるなんて決して言わないだろう。
私はそっと近づいて、抱き寄せた。
「フェイトちゃん…行かないで…」
弱々しい声。
でも、それを聞くわけには、いかない。
「…ごめん」
手に集めた電気を帯びた魔力を、首に当てる。
身体が一度ビクッと震えたかと思うと、声も出さずに崩れ落ちた。
「フェイト隊長!!」
ティアナが席を離れ、駆け寄ってくる。
「なのはを…頼んだよ。ティアナ」
「フェイトさん!!」
転送装置は今回必要ない。こちらが不意打ちされたのだ。
ハッチを開けて、
「また、ね」
飛び出した。
続く
実はベタな展開を目指してる。