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「終わったんやなぁ……」
静留はいつもなら確実にしないような仕草でベッドへ倒れた。
はぁ…と小さく嘆息。
幾許かそうした後、ふと、窓の方を見た。
閉められたカーテン。静留は怠慢な動きでそちらに向かった。
ゆっくりと手を掛け、引くとそこは黒だった。ポツポツと所々に光が見える。そして一際大きい光が、空にぽっかりと浮かんでいた。
その右下に、不吉な赤い光はなかった。
数歩下がり、ベッドに背を預けて座った。そのままそれを仰ぎ見た。
全てが終わったのだ。
そして、
全てが元に戻った。
誰かがそう言っていた。
でも、
それは本当なのだろうか。
否
何も戻っていない。
自分の手は汚れたまま。
何も戻ってはこなかった。
自分は取り返しのつかないことをしてしまった。
例えHiMEの力を持つものと、その想い人が帰ってきたとしても、
自分が殺した人間は帰ってこない。
自分が傷つけた人間の心の傷は治らない。
静留は自分の手を見つめた。
「もう何もかも……うちには残ってへんのやなぁ……」
身体の血を浴びて、心に血を被り、黒く汚れた手。
もう触れられそうにはなかった。
ふと涙がこみ上げてくる。静留は上を向いて、顔を歪め、必死に堪えた。
泣いてはいけないのだ。
己が望んで作った罪なのだから。
あのまま死ねれば良かった。
でも、死ねなかった。生き返ってしまった。
「神様も残酷やなぁ」
そう言って、死んだ緋色のガラス玉は、先程まで赤い星光っていたはずの場所を見つめた。やはり何もないその場所に、自嘲的な笑みを浮かべた。
「これが……うちへの罰…なんかなぁ……」
その言葉が風の中に消えると同時に、一筋の雫が頬を伝った。
Fin.
好きなキャラを肉体的にも精神的にも苛めるのが大好きです(←最悪