戦争が激化していく中、フェイト達はいつものように要救助者の元へ向かっていた。
「うわぁああああん」
「大丈夫だよ、今手当てしてあげるから…」
足から血を流している子供を、なのはは励ましながら応急処置をしていく。
「フェイト隊長!!敵軍がこちらにも…!!」
「私が応戦する!!全員救助者を連れて退避!!」
「はっ!」
フェイトを置いていくのは忍びないが、魔力を行使できる人間は少ない。
自分がいても邪魔になるだけだ。
それに、フェイトは必ず帰ってきてくれるという自信があった。
なのははそう思い、怪我人を連れて退避した。
銃声が轟く。
すぐ傍まで来ているのだろうか?
なのはは歩みを速める。
だがその時、
なのはは振り返ってしまった。
先程の場所で倒れている人影。どうやら気絶してしまったらしい。
「先に行ってて!私、あの人を…!」
「なのはさん!待ってください!!」
隊員が呼びかける。なのははそれを無視して、もと来た道を走る。
倒れている人のすぐ後ろに、手榴弾が投げ込まれた。
なのははさらにスピードを上げた。
「大丈夫ですか!?」
声をかけるが、返事はない。
ふと見ると、たった数メートルのところまでそれは転がっていた。
動かそうとその身体を引くが、軍人としての訓練もそう受けていないなのはにとって、人一人を抱えて逃げることは出来ない。
なのはは咄嗟にその人が爆風に巻き込まれないように覆い被さった。
なのはが目を瞑り、歯を食いしばって耐えようとするすぐ後ろで、耳を劈く爆発音が聞こえた。
だが、何故かいつまで経っても痛みはこない。
ゆっくりと目を開いて振り向く。
すると、
「フェイト…ちゃん」
口から勝手に、言葉が出た。
「なのは…怪我、ない?」
彼女がこちらを向いて、そう問う。
私は彼女の腕を見て、
絶句した。
フェイトの左腕は火傷というより焦げているという状態に近かった。
バリアジャケットは原型を留めていない。
どうやら、手榴弾の周りに、オーバルプロテクションを張ったようだ。
でも、いつものフェイトなら手榴弾一個や二個に苦戦は強いられないはず。
「うぐっ…」
フェイトが膝から崩れ落ちた。
なのははすぐさまにそこに駆け寄る。
「フェイトちゃん!何で…なん、で…こんな…!!」
「私は…いいから…」
その額には脂汗が流れていた。
フェイトは痛みを耐えて歯を食いしばり、立ち上がる。
「なのは…そっち側の肩…持ってあげて…」
フェイトは左手を焦げた外套で隠し、右腕でその人を担ぐ。
「でも…ふぇいと、ちゃん」
「いいから!!」
大声で怒鳴られて、なのはは肩を竦めた。
だが、それに一々気を取られているほどの暇はない。
なのはは涙を頬に伝わせながらすぐに立ち上がり、その人を抱えた。
林の上から船が顔を出している。
そう遠くはないはずなのに、焦れば焦るほどそれは遠く感じた。
人を挟んだ反対側から、荒い息が聞こえる。
でも、歩みを急がせることは出来ない。
「皆ぁー!!!」
林を抜けて、すぐに大声で呼びかける。
すると、出口付近にいた数人が気づいてくれた。
その途端、
フェイトはスイッチが切れたように倒れた。
「フェイトちゃん!!」
左腕を庇いながら、なのははフェイトを支えた。
汗を拭った額が熱い。
「なのはさん!フェイト隊長!!」
支えきれずに倒れそうになったなのはに、隊員達が駆けつけてきてフェイトを担架に乗せた。
「さあ!早く船に!!」
もう隊員も救助者もすでに中にいるらしく、人影はなかった。
再び近くで爆発が起き、傍にあった木が倒れてくる。
なのははそれを避けるように、急いで船の中に乗り込んだ。
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フェイトの怪我の原因は、手榴弾に魔力を弱らせる魔法がかかっていたことにあったらしい。
私は基地に戻ってから、彼女に付きっきりで看病に当たった。
包帯を交換するとき、火傷で黒く変色しかけた彼女の左腕を見るたびに、涙が出そうになった。
そんな時はいつも、彼女は優しく微笑みかけてくれた。
「大丈夫だよ…。こんなのすぐ、治るから…」
自分自身で治癒魔法をかけて治そうとするが、怪我をして魔力も体力も弱まっている人間がかけてもそう効くはずがない。
「なのはは気にしなくて良いんだよ」
彼女は右手で私の頭を撫でた。
勝手な行動を取って怪我をさせたにもかかわらず、そのことで私を叱ることはなかった。
それでも、私は自分が許せなかった。
許せるわけがなかった。
私も、フェイトちゃんを守りたかった。
続く
なんかこの話のなのはさんは子供っぽいと今更思った。