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「ごめんね…フェイトちゃん……」
今でも、あの言葉が
離れない
中学一年生の冬の日。
私はある決心をしていた。
「何?フェイトちゃん」
いつものように彼女は笑っていた。
放課後の教室
日が落ちて、なのはの顔を赤く照らしていた。
「あの…!!私…なのはのことが…」
尻込みして、段々小さくなっていく声を聞いて、彼女は首を傾げていた。
「なのはのことが…好き…なんだ……」
「それって……」
怖くて…彼女の顔を見て話すことが出来ない。
「と、友達としてじゃなくて…その……」
それでも私は懸命に言葉をつないだ。
でも、
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「フェイトちゃん!!嫌だよ!!」
「しょうが、ないんだ…よ…」
「嫌だぁ!!…こんな、こと!!」
「なのは……さよなら」
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「こんな事になるなんて…」
はやては拳を握ってテーブルに叩きつけた。
ただ
目の前の現実を、見たくなかった。
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正体不明のロストロギア
それの捕獲。そして、護送。
そんな任務が私達に回ってきた。
中学も卒業して、進路も別々で、あまり任務が同じにならなかったけど、今日久しぶりにその任務で三人は一緒になった。
でも、嬉しいねと言えるような簡単な任務ではなかった。
もうすでに複数の部隊が動いているにもかかわらず、自体は一向に良くなっていなかった。
それどころか大都市に何回も転移して、活動をしているようだ。
しかも、今回は管理局地上本部のあるミッドチルダの中心。
三人はすぐさま現場に飛んだ。
一本の大木を中心として枝のようなものが伸びていて、町を覆い尽くさんとばかりに広がっていた。
「これ…今も浸食中やから…気をつけて!」
はやてはそう私達に言った。
はやては指揮官として上から指示を出さなければならない。
私となのははすぐにそれ本体の中心を探すため、幹の中へと降り立った。
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「はやて捜査官!!ユーノ・スクライア司書長から通信が…!!」
「分かりました!つないで!!」
画面が大きく開く。そこにはいつも柔らかな表情をしている彼とは思えない形相だった。
『はやて!!今すぐ中に入った隊員を退避させて!!』
「何のロストロギアやったん!!」
『それが…!!』
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「…なんか気持ち悪いね…ここ」
なのはが私にそう言った。
確かに、木とはいえないような中身だ。どちらかというと、何かの胃の中のような。
「そうだね…こんなに大規模なのに核は小さいなんて…あっ!」
奥に進んで行くと、小さく光るそれを見つけた。
「これを封印すればいいんだね?」
「うん。そうみたい」
なのはがレイジングハートを構えた。
「私が封印するから…フェイトちゃんは待ってて?」
「…気をつけてね?」
警戒は解かずに、フェイトは了解した。
《Sealing mode.Set up》
なのはがレイジングハートを振り上げた、その瞬間。
「えっ!?」
「危ない…!!」
その光から、数本の蔓が飛び出した。
「がっ…!!」
「えっ…!?」
一瞬、自分の身に何が起きたか分からなかった。
『二人とも、いますぐそこをた…!?』
はやてからの通信画面が開いた。口を開いた状態のまま私を見ている。
「フェイトちゃん…!」
なのはが私を驚きのような、悲しみのような表情で見ている。
「なの…は…」
私を突き刺した蔓が動き出し、完全に私を絡め取ろうとする。
「駄目…!!」
なのはがそれを吹き飛ばそうと、アクセルシューターを作り出す。
『なのはちゃん…あかん!!そんなことしたら…!!』
「でも…!!」
『そのロストロギアは魔力を溜め込んで爆発するんや!』
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『元々は囚人用に作られた道具だったらしい』
ユーノがはやてと、武装隊の人間に無理矢理戻されたなのはに向かって話す。
『囚人の脱獄を防止するために、このロストロギアの元となったものを一人一人に埋め込んだらしい。それが誰かの手によって武器になるようさせられた』
ユーノは続ける。
『現在アレについて分かっていることは、取り込まれた人間を無理矢理引きはがそうとすると爆発するっていうことだ。あの枝で相当魔力を吸っているはずだから…爆発したら……ミッドチルダが無くなるくらいの勢いは…あると思う』
「せやったら…どうすれば…!?」
皆の心に絶対起きて欲しくないことが過ぎった。
しかし
『アレが爆発せずに取り外せるのは…取り込まれた人間が……死んだときだけだ』
それは現実になってしまった。
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もう丸一日が経とうとしていた。
フェイトは通信画面を開いたまま、そこにいた。
画面の向こうから、母さん達が話しかけてくれている。
「大丈夫だよ…母さん。このままだったら…三日くらい、保ちそう」
蔓が身体を貫いてはいるが、そのままなので血は流れ出ない。
たまに吐き気を催して、出すくらいだ。
「はやてと…なのはは?」
『ごめんなさいね…今、少し仮眠を取ってもらってるわ』
「そう…」
一番最初に通信を開いてきたなのはは、すぐに泣き出して、喚いていた。
はやても、泣き崩れてしまってあまり会話はしていない。
耳に残ったのはなのはの最後の言葉。
『ごめんね…フェイトちゃん……』
そう言った彼女は、あの時の彼女と同じだった。
「と、友達としてじゃなくて…その……」
「ごめんなさい…!!」
彼女はあの時、そう言って頭を下げてきた。
「私…ユーノくんと………」
それだけで理解できた。
「そ、そう、だよね」
自分でも声が強ばっているのが分かった。
「本当に、ごめんね!!こんなバカなこと…」
そうだ。
だって、女の子同士だし。
「フェイトちゃん!!」
「ごめん!!」
なのはが大声で呼びかけたのを更に上回る、叫び声に近い声で、私は答えた。
「もう…いいから……本当に、ごめん…」
「でも…!!」
「大丈夫、だよ…。ちゃんと、友達に戻るから…」
私は顔を上げてなのはの方を笑いかけ、
「また明日ね」
「ごめんね…フェイトちゃん……」
私はそれを聞いて駆けだした。
続く