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フェイなの
ほのラブ。そしてほんのちょっとのシリアス。

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************


「……また?」

通信の向こうから少し呆れたような、怒っているような声が聞こえてくる。金髪の女性は通信画面に映っている亜麻色の髪の女性の顔を見るのが少し怖くて、無意識に目線を反らした。

「……ごめんなさい。でも、すぐに終わると思っ「…昨日もそう言ってたよね?フェイトちゃん」」

間髪言わずに返されて、元々口下手なフェイトは口を噤む。なのははそんなフェイトの様子にため息をついた。

「…フェイトちゃんの嘘つき」

「ごめん…」

「馬鹿、おたんこなす、甲斐性なし」

「~~うぅ。なのはぁ~~」

その姿は飼い主に怒られた大型犬のようで、いつもキリッとして格好いいエリート執務官の姿は何処にもなかった。

「ヴィヴィオも最近会えなくて寂しがってるんだよ?」

ここ一ヶ月程、次元航行部隊という役柄から家には帰っていなかった。

やっと海から地上に戻ってきたというのに、今度はその任務の書類整理やなんやらで結局愛する妻と娘には会っていない。

「私だって寂しいよ~~」

「それじゃあ帰ってきて」

頬を膨らましてなのははフェイトを睨み付けた。といっても迫力はないが。

「明日には絶対帰るから!!」

フェイトは両手を顔の目の前で合わせて頭を下げて平謝りする。

「今日帰ってきて欲しいの」

「うぅ~…」

また唸り声を出すフェイトに再び嘆息。

「…もういいよ」

完璧に拗ねてしまったなのはは、通信画面のフェイトから顔を背ける。

「フェイトちゃんは私より仕事が大事なんだね?」

「ち、ちが…!!なの「バイバイ」」

通信が切れる。

「あ…」

フェイトは勝手に出来た音をそのまま口にした。


************


「フェイトちゃんの馬鹿…」

なのははベッドで膝を抱えて座りながら、そう呟いた。隣には愛娘のヴィヴィオが天使のような寝顔を披露してくれている。
それを横目で見て、膝を崩して頭を優しく撫でた。ヴィヴィオは擽ったそうに笑う。思わずこちらも笑顔が零れる。だが、その笑顔もどこか寂しげだった。


傷つけちゃったかな…


なのはの心がチクリと痛んだ。
嫌われたかもしれない。フェイトの部隊が大変だということは重々分かっている。
それでも寂しさにかまけて、つい子供のような我が侭を言ってしまった。
でも、言ってしまったあとにはもう取り返しがつかない。
もう一度通信して謝ればいいのだが、なんだかよく分からない意地がそれをさせてはくれなかった。


もう寝よう。


なのはは布団を捲ってその中に潜り込んだ。


明日になればフェイトちゃんに会える。会って抱きしめてもらえる。…多分。


少し不安を残しながら、それでも今のまま考え込んでもどうしようもないので、なのはは眠りに落ちた。
隣にある愛しい小さな温もりを抱きしめながら。


************


――――――…は


誰かが呼んでいる。


――――――……のは、なのは


覚醒しだした思考。不意に何か暖かいものが唇を塞いだ。

「…んうっ」

「なのは…?」

気怠そうに目を開けると、誰かが自分に覆い被さっている。その姿を認識した瞬間、なのはの完全に目が覚めた。

「ふぇ、ふぇいとちゃん!?」

「ん、なのは。おはよう」

昨日画面越しに話した彼女が当然のように目の前にいて、笑っていた。

「ど、どうして!?」

「明日は帰るって言ったよ」

まあ、そりゃあ午前0時を過ぎれば次の日な訳ですが、仕事が終わったあと、つまり夕方だと思うのが必然で。

「し、仕事は?」

「ん~、徹夜して無理矢理終わらせちゃった♪さっき帰ってきたんだよ」

フェイトはなのはに抱きついて顔を胸に埋めたまま言った。
なのはが唖然として何も言えないでいると、そのまま顔をそこにグリグリと押しつけて、久々のなのはだ~~、なんて幸せそうな声を漏らしている。

停止した思考が、やっと動き出す。

「え!?じゃあまだ寝てないの?」

「うん…まあ…」

フェイトはなのはが上体を起こすのに合わせて横に座り、誤魔化すように頬を掻いて目をそらした。

「無茶しちゃ駄目って言ってるじゃない!!」

なのはがフェイトを戒める。あんな我が侭をいったのに、と自分でも思った。
でも、無理はして欲しくない。

「う、うん…ごめん。でも…一分一秒でも早くなのはに会いたくって…」

そう言われると、なのはも何も言えなくなる。むしろ嬉しい。すごく嬉しい。
なのはは俯いて、きっと赤くなった顔を隠す。すると、フェイトはなのはを抱きしめた。

「寂しい思いさせて…ごめんね?」

なのはもフェイトの背に腕を回す。

「…うん」

今度はなのはがフェイトの胸に顔を埋める。フェイトはその頭を子供をあやすように優しく撫でた。
久しぶりの感触が、匂いが、温もりが嬉しくて、なのはは思わず目頭が熱くなっているのを抑えられなかった。そして、それほどまでに彼女を欲していたことに気づいた。なのはは濡れた目のまま顔を上げた。綺麗な紅い瞳がなのはを見つめてくる。二人が目を瞑り、そしてそのまま唇が近づいた。元々近かった距離がゼロになる。

 

が、その時。

 

グウゥゥ~~

 

唇が重なる直前、盛大にお腹の虫が鳴って二人はそのまま固まった。途端フェイトの顔が真っ赤になる。

「…プッ」

なのはは笑いを抑えるように左手を口に持っていき、俯く。肩が小刻みに震えている。

「わ、笑わないでよ…!!そういえば、急いでたから何も食べてないんだった…」

フェイトは顔を赤く染めたまま、その大失態にブツブツと呟いた。

「そんなに急いでくれたんだ…?」

なのはは優しく微笑んで、上目遣いでフェイトを仰いだ。

「う、うん…」

そう言うと、なのははもう一度クスッと笑って、唇を軽く攫った。そしてそのままベッドから立ち上がる。

「な、なのは…!?」

フェイトは更に顔を赤くさせてなのはを見上げる。

「丁度良い時間だから、朝ご飯作るね。食べてから寝た方が良いよ。終わったんだったら今日は休みでしょう?」

「うん…」

「それじゃ、ヴィヴィオ起こしてあげて。私は飛びっきり愛情こもった美味しいご飯作るから♪」

「うん…分かった。久しぶりのなのはのご飯、楽しみだな~♪」

二人は顔を見合わせると笑いあった。

 

Fin.

 

ヴィヴィオが空気
きっとこのあと起こされたヴィヴィオがもうフェイトにベッタリだったに違いない。
そしてなのはさん拗ねる。フェイトさん宥める。そして三人で一家団欒。

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