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嘘だって言って欲しかった。

 

こんなことって……。

 


「フェイトちゃん…何してっ…!?」

近づこうとして、フェイト手の中にあるものが、何であるか気づく。

「うっ……」

急に吐き気に見舞われて、なのははその場にしゃがみ込んだ。



溢れかえる、血の臭い



「なの、は………」

フェイトは正気を取り戻したように、濁った紅に光を戻した。



だが、



黒いバリアジャケットから赤黒いものが滴るのは止められなかった。
そんな自分の手を見て、咄嗟に伸ばした手を引っ込める。

「…彼女を医務室に連れてってあげて……」

「はっ」

フェイトは赤く染まった外套を翻した。

「私は……これを届けてこなくちゃならないから……」

「……皆に伝えておきます」

フェイトはなのはを見ることなく、

「頼んだよ」

足を引きずりながら、森の中へ戻っていった。

 

************

 

「なのは…大丈夫かな……?」

「…それよりも自分の心配をしてください!!」

フェイトの補佐官の一人であるティアナに怒られて、フェイトは肩を竦める。

「銃痕は治りにくいんですから…、もっと気をつけてください」

「うん…ごめん……」

左足を入念に包帯で巻かれて、フェイトはそれを隠すようにその上からズボンを履いた。

「あまり動かさないでくださいね?」

「……分かった。ありがとう」

そのままベッドから立ち上がり、出ていこうとするフェイトを見て、その人は慌てて手を引いた。

「ど、何処に行く気なんですか?」

「え?自分の部屋にだけど……」

「今日はここに泊まるんじゃないんですか?」

フェイトは視線を追えるようにゆっくりと動かした。
その先には、カーテンで閉じられた一つのベッド。

「ちょっと今は…会いたくないんだ」

フェイトは力なく笑った。

「……くれぐれも、無茶しないでください」

ティアナはそれに何も言えず、フェイトの背中に向けてそれだけを促す。
だが、フェイトは何も言わず、そのまま部屋を後にした。

「ふぅ……」

ティアナは力なく嘆息すると、カーテンに仕切られた向こうのフェイトがここにいられない要因に目を向ける。
すると、布擦れの音がして、ティアナは気づいた。
そのままそのカーテンに徐に近づいて、それを開く。

「なのはさん?……起きてるんですね」

「ティアナ……」

一度だけティアナを見て、なのはは毛布と一緒に丸くなった。

「フェイトさん…一人にして良いんですか?」

「フェイト、ちゃん……」

言葉が詰まる。

「フェイトちゃん、が……あの人……」


信じられなかった




フェイトが、あんな目をして人を殺すなんて




まるで、興味の無くなったオモチャを壊す子供のような


無表情


ショック、という言葉が一番妥当だろう。

「フェイトちゃんも……軍人さんなんだね……」


あんな屈託のない笑顔を見せてくれるフェイトが。


「……この隊が、何故成立しているか知っていますか?」

ティアナは断定に近い問いに答えずに、そう言った。

「普通に考えて、人命救助の為だけに一つの隊を作るところなんてありません」

なのははその中で身体を動かし、ティアナの方へ視線を移す。
ティアナの方はというと、どこか遠くを見るように俯いたままだ。

「人命救助をさせてもらうために、人を助けるために……人を殺すこともこの隊の存在意義なんです」

「…敵基地や敵の軍への少数での乗り込み、そして、暗殺……」

ティアナはそう続けた。
その言葉を聞いて、なのはは先程の光景を思い出す。



鮮やかな、赤



また吐き気がして、なのはは唇を強く噛んだ。

「……」

「辛いんですか…?」

なのはは答えない。
無意識だろうか、震えているなのはを見て無理もないと思った。
自分だって、最初の頃は怖かった。何度も吐いたりした。今だって、気持ちの良いものだとは思えない。

でも、

「……フェイト隊長の方が、もっと辛いと思いますよ…」

それだけは、きっと事実。


なのはは我に返った。

 

自分を見たときの、怯えた表情。

苦しそうに寄せられた眉。

それだけで、彼女がどんなに苦しんでいるか分かったはずだ。



それなのに……私は、


「隊長は、あなたが来てからよく笑うようになりました」

 

自分のことしか

 

「私も、あんなに嬉しそうに笑うフェイトさん、見たことありません」

 

考えられなかった

 

「軍隊の中では、階級に縛られていますから……あまり甘えるということが出来なかったんでしょうね……」


なのはは毛布を蹴飛ばすように起き上がった。

「え!?な、なのはさん!?」

急な事に吃驚して、ティアナはなのはを見据える。

「私、フェイトちゃんのところに行ってくるよ…!」

なのはは返事を聞く前に医務室を飛び出した。

「な、なん…!?」

その素早い行動に、ティアナは呆然とその姿を見送ってしまった。
だが、状況を理解するにつれ、その顔に苦笑を浮かべた。

「なのはさんって……すごい……」

 

************

 

角を右に曲がって、一直線にフェイトの自室に向かう。

「フェイトちゃん!」

息切れを起こしながらも、なのははドアを開けて大呼した。

「なのは…?」

なのはの剣幕に、フェイトはベッドから身体を起こす。

「どうしたの?寝てたんじゃ……」

「フェイトちゃん……」

たった一日。

それだけなのに、肌にも髪にも色が無く、目に覇気が無くなっていた。

「ちゃんと医務室で寝てなきゃ駄目だよ?」

フェイトはそう笑って、足を引き摺りながらなのはに近づいた。

「フェイト、ちゃん」




そうか



私が怖かったのは、



そんな顔をしながら人を殺す彼女じゃなくて、



私の知らない彼女がいるんだという、恐怖

「どうしたの?」

朗笑するフェイトの笑みは、どこか強ばっている。
そんな表情が痛々しくて、なのはは思わず抱きしめていた。

「な…に?なのは…?」

「そんな顔しないで……」

腕の中で、フェイトが息を飲むのが分かった。

「無理して、笑わないで…」

「なのは……」

だが、フェイトはやんわりとなのはを押し返した。

「駄目だよ。なのは……」

「なんで!?」

「私なんかに触ったら、汚くなるよ」

今度はそう嗤った。

「そんなこと、ある訳ない!!」

「でも、見たでしょ?」

フェイトはゆっくりとなのはから距離を取った。

「何人も殺して、首を狩って…それを上官に届けて……血に塗れて……」

だから、ね?と言い聞かせるようにまた微笑む。

だが、なのはは怒ったように眉を上げてフェイトに近づいた。

「そんなこと、どうでもいい!!」

そんな言い草に、フェイトは目を丸くした。

「私はフェイトちゃんが汚いなんて思ったこと、一度もない!」

なのははさらに続けた。

「私は、フェイトちゃんの本当を知りたい!フェイトちゃんの全部を!」

もう一歩、近づく。

「……泣きたいときは、泣いていいんだよ。苦しいときは、苦しいって言っていいんだよ」

さらにもう一歩。

「なの……は……」

上手く伝えられない気持ちがもどかしくて、なのははもう一度抱きしめた。

「わた、しは……」

ゆっくりと腕が回され、

「なのは…!!」

強く引き寄せられた。

「なのは!なの、はっ!!」

噎び泣くその姿は、まるで子供が縋り付いているかのようだった。

 

************

 

「ありがとう…なのは……」

一頻り泣き終わると、フェイトは腕を放した。

「大丈夫…?」

「うん、なんか…久しぶりにこんなに泣いたよ」

すっきりした、と笑う顔には、いつものような穏やかさがあった。

「フェイトちゃんは、何でも溜め込みすぎだよ…」

なのはもつられるように笑った。

「心配、かけちゃったかな?」

「当たり前だよ」

「ごめんね…」

フェイトはシュンと頭を垂れた。

「謝らなくて良いから、今度はもっと私に頼って?私はずっとフェイトちゃんの傍にいるから」

その言葉にフェイトは面を上げ、何故か顔を赤くした。

「どうしたの?」

なのははそれが何故だか分からずに、疑問をぶつける。

「いや、その……」

「正直に言ってよぉ~」

フェイトは目を泳がして頬を掻くと、

「それは、告白と取っていいのかな?」

そう言った。
それに伴い、なのはは脳内で自分が言ったことを反復する。
途端になのはの顔も赤くなった。

「し、知らない!!」

「えぇ~」

嬉しそうな笑顔から一変、眉を下げて拗ねる表情は、まるで子供のようだった。



続く

ティアナが出てくるの多分ここだけだと(ry

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