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フェイはや
前の帰り道のはやてバージョン
シリアス

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************

 

「フェイトちゃん?」

「ん、何?」

私が呼びかけると、フェイトは長い金髪を揺らめかせて振り返った。一瞬それに見惚れてしまう。

「…どうしたの?」

答えない私に不思議そうな顔して近づいてくる。そう言っても、私と彼女の距離はたった数歩。でも、それがすごく長い時間に感じた。

「…え~と、二人で帰るのって久しぶりやなぁって…」

言ってしまってから、はっと気づく。慌てて彼女を盗み見ると、深い意味には捕らえていないようで、

「そうだね」

そう笑顔で返してきた。

「いつもはなのはと、アリサとすずかと、誰かしらいたから…」

何かが胸をチクリと刺した。でもそれもいつもの事。

「はやて?」

私は背の高い彼女を仰いだ。

「帰ろう」

「ん……」

横に並んで二人は歩き出した。
隣でいるだけで、心が安らいで、こんなにも心かき乱される。でも楽しい時間ほど過ぎてしまうのは早くて。


もう、別れ道。


「それじゃ、また明日」

また明日になれば、彼女には会える。でも…

「あの!フェイトちゃん!!」

「ん、何?」

彼女はまた振り返った。黄昏に反射して深みを増したフェイトちゃんの紅い瞳が、私を真っ直ぐ見つめていた。

「え~とな…え~と」

言葉に詰まる。特に話したいことなんかない。ただ一緒にいたい。この時間だけで良いから、二人だけの時間が欲しい。


でもそんな事、言えなくて。


私は軽く一度俯いて、顔を上げる。言葉を出すために息を吸う。

「…はやて、これから暇?」

先に言の葉を紡いだのは彼女の方だった。

「あ、いや、別に…用事とかあらへんけど」

考える前に口が動く。

「そっか」

半分放心している私の手を取った。

「それじゃ、少し寄り道しない?」

「ん…」

こくりと頷く。彼女は照れくさそうに笑って、そのまま別の道へ進み出した。

「ちょっ…そんな引っ張らんといて!」

「ごめん♪」

そういいながらも、私は手を離さなかった。彼女もその手を握っていてくれたと、今は自惚れてもいいだろうか。


日が沈む。明るかった空の端に、小さく光る星が瞬いていた。


************
 

「…そろそろ帰ろうか?」

すでに辺りは真っ暗。夕食もファーストフードで済ませてしまった。

ちゃんと連絡はしているので家族が心配することはない。
でも、そろそろ門限だろう。

「せやな…」

「送っていくよ」

「でも…フェイトちゃんが…」

「私は大丈夫だよ…ほら、強いし!」

そう言って、笑いながら力こぶを見せるように腕を曲げてそこを逆の手で叩く。

「その割りには全然膨らんでへんよ~」

私もつられて笑った。
残念ながら、厚着した服の上からでは少しも膨らんではいない。例え脱いでも引き締まって筋肉質なのは変わりないが、力こぶが出来るような筋肉の付き方の身体ではないはずだ。

一瞬、生まれたままの彼女の姿が浮かんで、赤面する。

「どうしたの?」

そんなことには目聡く気づいて、のぞき込むようにこちらを見た。

「な、なんでもあらへん!」

そう言って、先に歩き出す。一度考えた想像はいつまでも消えてはくれない。

彼女が…そのまま私を抱きしめてくれたら。きっと心地よいだろう。

でも、そんなこと…。

「はやて、ちょっと待ってよ!」

フェイトちゃんが小走りでこちらに来るのが分かる。不意に腕を引かれた。

「ちょっ…!?」

急停止させられそのまま向かい合わされる。

「顔赤いよ…?」

そう言って、彼女は私の頬を両手で包んだ。余計に体温が上がるのが自分でもよく分かった。

「寒い…?」

「…せやなあ」

本当は全然寒くなんかなかった。でも、ずっとこの手の温もりを感じていたかった。

「いたっ」

しかし、それとは裏腹に手はすぐに離されてしまった。彼女が顔に手を当て俯く。

「どないしたん!?」

「ん…ちょっと目に髪の毛が…」

大丈夫と笑ってはいたが、涙がうっすらと見えて少し目が赤くなっていた。

「そろそろ前髪切らなきゃだめだね…」

指先で前髪を弄くるフェイトちゃんを見て、私は無意識に自分のピンを外していた。

「フェイトちゃん…ちょっと屈んで?」

彼女は素直に屈んでくれた。私はそのピンを両耳のところでとめて前髪がかからないようにする。

「はい、これで大丈夫や」

「これ…いいの?」

「ええってええって。まだ沢山あるし…そのままもらっといて?」

「うん…分かった。ありがとう」

彼女ははにかむように笑い、徐に自分のしていたマフラーを外し始めた。私がそのまま様子を見ていると、既にしてあったマフラーの上からそのマフラーを捲いていった。

「フェ、フェイトちゃん!?」

「寒いんでしょ?」

「そ、そうやけど…フェイトちゃんが…」

「私は大丈夫だから」

返すべきなのに、変なところで我が侭が出てしまって、返したくなかった。

「それじゃ…行こっか?」

「ありがとう……」

「うん…」


伝わって欲しい。

けど、伝わって欲しくない。

結局臆病なんだ、私は。

でも、今だけは…。

彼女に渡った私のピンが街路灯の光を反射した。

 

Fin.


はやてかわいいよはやて

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