「フェイトちゃ~ん」
「な…んぶっ!!」
何、とたった二文字を言う前に、顔に何かがぶつかった。
「ははは♪フェイトちゃん直撃や~」
何だろうと思う間もなく、それを理解する。雪玉を投げられたのだ。
「はやて!」
「えい!」
フェイトはそれを最小限の動きで躱す。というか、怒っているのに効き目は全くないようだ。
「お~、さすがはフェイトちゃん。足場が悪くても回避はピカイチや」
「いや、そういうことじゃなくて…」
「ん~、せやったら何?」
そう言っている間にも、はやては雪玉をつくり、投げて来る。
「何で投げてくるの?」
ひょいっと屈んで次の玉を避ける。
「…そこに雪があるから?」
そんな名言をここで引用しないでよ、とフェイトは思ってため息をついた。
まあ、20㎝近く積もっている雪を見れば、やりたくなるもの分かるが。
「ねぇ、フェイトちゃん」
「何?」
「雪合戦しよ?」
「いや、もうしてるでしょ?」
「やかて、フェイトちゃんからは投げて来うへんもん」
はやては寒さで赤くなっている頬をふくらました。
「そう…それじゃあ…」
基本的に私は負けず嫌いだ。彼女もそうだろうけど。
フェイトは雪の中に片手を入れて、はやてから距離をとる。
「逃がさへん!」
話している間に作られた雪玉をビュンビュン投げてくるはやて。
それって反則じゃないの?
ブルドーザーのようにかき集めた雪を柔らかく固めて投げる。
「うわっ…!」
そう言いながらもはやては避けた。
いつも訓練している私達にとって、前方からしか来ない、しかも規則的な動きしかしない雪玉は取るに足らない存在だ。
これじゃあいつまで経っても終わらないな…。
フェイトは一つ息をついた。
「はやて!!」
「何?」
答えながら投げてきた雪玉を叩きつぶすと、
「愛してるよ!!」
そう言って投げた。
「なっ…ぶはっ!!」
直撃だ。しかも大げさに倒れた。下は雪だから大丈夫だろうけど。
「私の勝ちだね?」
「ずるいやん~」
ブーと、ブーイングを上げるはやての顔は、心なしか先程よりも赤かった。
「戦略だよ」
そう言ってはやての手を取って、立ち上がらせる。
「う~、手ぇ冷たい」
「当たり前だよ」
二人とも手袋なんてしていない。
「フェイトちゃん…」
「何?」
「手、繋ご?」
何となく、はやてが何故急にこんなことをしたのか分かった気がした。
「うん」
二人は手を繋いで、そのまま家路についた。
Fin.
はやては何か理由がないと行動できない人だと思う。